少女の心に光を灯したのは・・・

◆希望となる光を

私たちはみんな何かしら大切なものや思い出の品を持っています。
少女にとってその最初の物がお兄さんといつも一緒にかぶっていた帽子だったんですね。
その大切なものを失くした悲しみは、新しい帽子では埋められない。その思い出までは元に戻すことはできないのです。

でも、その中で段々と新しい帽子との思い出を一緒に重ねていくことで、やがて「私」の一部のように変化していきます。
喪失の悲しみをいかに乗り越えるのか?
読者に向けてその答え、希望となる光を与えてくれるような作品です。

佐野洋子さんの詩的な文章と絵も大変美しいです。ゆったりとした時の流れを感じさせる世界観。柔らかさの中に強さもあるように感じられます。
純粋で繊細な少女の心を美しく描き出し、その心の機微を一切無駄のない文章で読者に伝えています。

読んだ後、ふっと心が軽くなるような不思議な爽やかさも感じます。
子ども時代に大切だったもの。それは大人になってから得る大切なものの原点になっているのかもしれません。
それを改めて思い出しながら、親子でぜひ作品を堪能してみください。

えもり なな について

江森 奈々(えもり なな)1985年神奈川県生まれ。千葉県在住。幼少期より母から良質な絵本を与えられて育つ。幼い頃から絵を描くことが得意で、小学生の頃は漫画を描く。中学生になると美術部に所属し油絵を始める。灰谷健次郎の「兎の目」に感銘を受け、10代は日本や世界の児童文学を読みふける。現在、保育士をしながら絵本や童話、紙芝居の創作、読み聞かせを行っている。画家・イラストレーター、モデルとしても活躍中。絵本は1500冊以上読破。2023年be京都にて初のプチ個展を開催。パレットクラブスクール19期絵本コース卒業。トムズボックス2019冬季ワークショップ修了。 『絵本作家になるには、絵が描けないと無理ですか』(CATパブリッシング)の挿絵を一部担当。 ●YouTube:【なないろ本屋/7's BOOKSHELF】 ●Instagram:【nana_museum】