心が温かくなるこの作品!

ワオキツネザル書影ちいさなワオキツネザルのおはなし
オフィーリア・レッドパス  作・絵
松波佐知子 訳
徳間書店

わたしは動物が大好き! 家の近くの公園に小さな動物園があるので、ちょくちょく出かけます。大きい動物はいないけれど、うさぎやワラピーやレッサーパンダがいて、とても癒されます。
この絵本はタイトルのとおり、ワオキツネザルのおはなし。表紙のイラストを見たとき、愛らしい姿が目にとまりました。
しましまで長ーいしっぽのワオキツネザルの子どもが、ちょこんと木にしがみついているのです。今にでも、いたずらしそうなかわいらしい目をしています。ところが、ページを開いてみると、一変して船のまるい窓から不安そうに外を眺めている姿・・・。

故郷のマダガスカルから遠い北の町まで船でつれてこられてしまったのです。ワオキツネザルは船から逃げ出して、港を走りぬけ、屋根から屋根へ飛びうつり町に出ました。そして、一軒の家を気に入って、するすると煙突からもぐりこみました。この家は故郷と同じような観葉植物があったからです。
みんなが寝静まると、ワオキツネザルは家の中を探検してまわります。長ーいしっぽをくねらせ、その姿がとても愛らしくかわいいです。好きなだけ、食べたり飲んだりすると、ちょうどいい場所をみつけてぐっすり眠ります。
何も知らない家の人は、食べ物やランの花がなくなっていることを、子どものララのせいにします。「あたしじゃ、ないもん」とララは言いますが、大人は信じてくれません。
濡れ衣を着せられたララは、どうなるのでしょう? そして、ワオキツネザルはどこに隠れているのでしょう?

あんなところを寝床に! ワオキツネザルが予想外のところにいてびっくりしますよ。ユーモラスで心が温かくなるお話です。お母さんがララと向き合う姿もきちんと書かれています。安心して読め、幸せな気持ちになる絵本です。
暖色系で個性的なイラストも素敵です。ワオキツネザルがどこに隠れているのか、子どもといっしょに探しながら読むのも楽しいと思います。

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麻生かづこ について

(あそうかづこ) 大阪府生まれ。千葉県育ち、東京都在住。花と絵本を見るのが好き。ボランティアで読み語りをしています。絵本や紙芝居も作りたくて、ただいま修行中。 「ぞうのくしゃみでおおさわぎ」で毎日童話新人賞最優秀賞受賞。主な作品に『あしたははれ曜日!』(第42回緑陰図書)『きいちゃんのおへそ?』(ともに、そうえん社)、『うふふ森のあららちゃん』『天までひびけ! ドンドコ太鼓』(ともに、国土社)、『ハセイルカのハルカが泳いだ日』(佼成出版社)、『亡霊クラブ 怪の教室』シリーズ(ポプラ社)などがある。 この本だいすきの会会員。