怒りを煮詰めてジャムに? 怒りが昇華される過程を楽しく描いた物語

◆なんで怒ってたんだっけ?

そして、段々と冷静になって、怒るやめ方がわからなくなっていたことに気づきます。
その時、「ぼく、そういえば、なんで怒ってたんだっけ?」という心境に変わります。
その頃にはお鍋の中にピンク色にキラキラ輝くジャムが出来上がっていました。
あぐりさんはそれをお土産にハルに持たせてくれます。

そしてその帰り道、タニくんとばったり出会います。その時タニくんが待ち合わせ場所に来なかった本当の理由がわかりました。ちょっとした行き違いがあったんですね。

この童話は、怒りの昇華する方法、怒りの感情との向き合い方を大人にも子どもにもわかりやすく伝えてくれているように思います。
怒りを目に見える「プンスカ」というものに見立て、それを自分で見つめながら、怒りの感情が身体のどの部分に感じられるのか一つ一つをリアルな感覚とともに感じ切ります。

そうすることで怒りの感情エネルギーは昇華されるのですが、その過程が見事に描かれています。
私は初めて読んだ瞬間、心理学における感情、特に怒りのコントロールを物語を通して伝えようとされているのかなとこの作品に込めた意図を感じずにはいられませんでした。そこに作者であるくどうれいんさんの感性の鋭さ、秀逸さを感じ取りました。

えもり なな について

江森 奈々(えもり なな)1985年神奈川県生まれ。千葉県在住。幼少期より母から良質な絵本を与えられて育つ。幼い頃から絵を描くことが得意で、小学生の頃は漫画を描く。中学生になると美術部に所属し油絵を始める。灰谷健次郎の「兎の目」に感銘を受け、10代は日本や世界の児童文学を読みふける。現在、保育士をしながら絵本や童話、紙芝居の創作、読み聞かせを行っている。画家・イラストレーター、モデルとしても活躍中。絵本は1500冊以上読破。2023年be京都にて初のプチ個展を開催。パレットクラブスクール19期絵本コース卒業。トムズボックス2019冬季ワークショップ修了。 『絵本作家になるには、絵が描けないと無理ですか』(CATパブリッシング)の挿絵を一部担当。 ●YouTube:【なないろ本屋/7's BOOKSHELF】 ●Instagram:【nana_museum】