春を泳ぐヒカリたち(7/11)

文・高橋友明  

石が崩れる音がしたように思えた。
ぼくはうつぶせになっていて、ゆっくりと目を開けた。すると目の前に、確かに石がくずれている。
もう少し顔を起こして見ると、そこには子どもたちと鬼がいた。

川辺である。
子ども達は川から石を持ってきてつみ上げる。そして子どもが、これでできたという顔をすると、鬼がやってきて、せっかくつんだ石ころをけとばしてしまう。
そのたび子どもは泣いたが、やがて泣き止むと、また川にいき、石ころを探しにゆく。

どうやらはここは、賽の河原(さいのかわら)であるようだ。だとすれば川は、三途(さんず)の川ということになる。
立ち上がってまわりを見ると、ぼくはギョッとせずにはいられなかった。

高橋友明 について

千葉県柏市在中。日本児童教育専門学校卒業。 朝昼晩に隠れているその時間ならではの雰囲気が好きです。やさしかったりたおやかであったり、ピリッとしていたりする。 同様に春夏秋冬や天気や空模様も好きです。 そうしたものを自分の作品を通して共感してもらえたら幸いです。