月夜のネコかいな(2/4)

「うそお」
「ここのお客は一人だけなんだ。だからいいんだよ」
「えー! 一人だけえ」
そんなこと聞いたこともありません。
「子供?」
トモちゃんが聞くと、お面屋はちょっと首をかしげて、
「子供ではないと思うね」
と言いました。

「わかんないの?」
トモちゃんがまた聞くと、今度は反対の方に首をかしげて、
「私らよりずーと年上であることは確かだね」
と言いました。
「おばあちゃん?」
「知らないね。おじいちゃんかもしれない。何億歳かくらいじゃないかな」
「えー!
びっくりして叫んでしまいました。どうやら、人間じゃないことは確かなようです。

「その人、今から来るの?」
「来るよ」
「待ってていい?」
お面屋はめんどくさそうに、
「好きにしな」
と言いました。
トモちゃんは待つことにしました。
怖さも感じましたが、見たいと思う気持ちの方が勝ちました。
お姉ちゃんとの約束は、変なお面を買いにくる何億歳のお客のことで、とっくに吹っ飛んでいました。

夏美 について

大阪出身。童話やミステリーが好きで、少年探偵団や少女探偵ナンシーで育ちました。自分もそんな感じの、子供がワクワクできるようなミステリーやサスペンスを書けたらいいなあと思っています。ようやく落ち着いてパソコンに向えるようになった主婦です。尊敬する人はグラン・マ・モーゼスです。