森のまいご(3/3)

文と絵・ひなたのんき

「また、パックづめかよ。何てこった。森には、こんなにたくさん、食べものがあるのに、おまえは、パックにつまってなきゃ、食べられないのか。一体どうやって、おまえを太らせりゃいいんだ」
ふいに、オオカミの目が、ぎらりと光った。その目が、ゆっくりと男の子の方を向く。

「しょうがねぇ。どうあっても、太らないんだったら、いっそ、このまま食っちまおう。少しは、はらの足しになるだろ」
「え、え。ちょ、ちょっとまって」
「安心しろ。ホネまでちゃんと、しゃぶってやる」
「ま、ちょ、まって。ガ、ガリガリにやせたぼくなんか、おいしくないよ。それよりも、そのウサギを・・・」

ハッと気づいて、男の子はウサギを見た。オオカミも、ハッとした顔で、ウサギに目をやる。
そのまましばらく、ウサギを見つめる、一人と一匹。
「・・・ねぇ。ウサギを食べるなら、ぼくのことは、食べなくてもいいんじゃない?」
「・・・それもそうだな」
「ぼくのこと、わざわざ太らせてから食べるより、このままウサギを食べちゃう方が、楽ちんじゃない?」

「・・・それもそうだな」
オオカミは、少しの間、ちらちらと、男の子とウサギを見比べて、考えていたが、
「ふむ。それもそうだ」
とつぶやくと、ガツガツとウサギを食べ始めた。

ひなたのんき について

東京都出身です。空と、水のある景色と、物語の世界が大好きです。 絵は描けないけど絵本が描きたいので、絵本の文章を編集さんに見てもらったりしています。 好きな絵本作家は、かがくいひろしさん、長谷川義史さん。 好きな童話は、寺村輝夫さんの「ぞうのたまごのたまごやき」、「こまったさんのオムレツ」。 好きな物語の出だしは、安房直子さん作「きつねの夕食会」の「新しいコーヒーセットを買ったので、きつねの女の子は、お客をよんでみたくてたまりませんでした」。 こんな風に人に衝撃を走らせる一文を、自分もかきたいと思います。