母と子の愛を思い出させてくれる絵本

おかあさんごめんなさい
みやにしたつや 作・絵
金の星社 2021年9月刊

今日ご紹介する絵本は、作者である、みやにしたつやさんが今年6月にお母様を失くされたことをきっかけに創作された絵本です。

亡くなった母に向けて贈るメッセージ、そして世界中のお母さんたちに向けても深い愛が込められています。
私はこの作品を読んだ後、自分と母との関係を思い出し、思わず涙がこぼれ落ちそうになるくらい胸が熱くなりました。

このお話は、タイトルにある通り「おかあさん、ごめんなさい」と言う男の子の言葉から始まります。
男の子がお母さんに謝りたいこと。それは一体何なのでしょう?

例えば、お母さんが一生懸命作ってくれたごはんを「おいしくない」と言ってしまったこと、いろんないたずらをしてお母さんを困らせてしまったこと、喜ばせようと思ってやったことが裏目に出てしまったこと・・・など。
ユーモアを交えながらそれらが、一つひとつ紹介されていきます。

その内容は、誰しも一つや二つ当てはまることがあるのでないかと思えるものばかりです。
最後に男の子は「ぼくはいいこじゃなくてごめんね」とお母さんに謝ります。
でも、反対におかあさんも男の子に思うことがありました。
寝ている男の子のそばで、おかあさんも・・・。

母と子、お互いの気持ちを伝えきれていなかったのがとても切なく、読者の心に響きます。
母の愛、母の偉大さ、どんな時も大きな愛で包んでもらっていたこと、大切に育ててもらったことを思い返し、今の自分があることに改めて感謝する気持ちを呼び起こさせてくれます。

母子関係において、時にすれ違ったり、反抗したり、いがみ合ったりと、そこにある愛や真意をお互いに汲み取れない時期もあるでしょう。
でも、「親になって知る親心」という言葉にもあるように、時が経ち大人になってみて初めて気づける愛、失って初めて気づく愛があります。

この絵本は今元気で生きてくれている母に対して親孝行したり、感謝の気持ちを言葉にして伝えることの大切さも教えてくれているように感じます。
そして、あなたはいつも愛されていた、かけがえのない大切な存在であるということを再認識できる、そんな絵本です。
ぜひ親子で一緒に読んでみてください。

えもり なな について

江森 奈々(えもり なな)1985年神奈川県生まれ。千葉県在住。幼少期より母から良質な絵本を与えられて育つ。幼い頃から絵を描くことが得意で、小学生の頃は漫画を描く。中学生になると美術部に所属し油絵を始める。灰谷健次郎の「兎の目」に感銘を受け、10代は日本や世界の児童文学を読みふける。現在、保育士をしながら絵本や童話、紙芝居の創作、読み聞かせを行っている。画家・イラストレーター、モデルとしても活躍中。絵本は1500冊以上読破。2023年be京都にて初のプチ個展を開催。パレットクラブスクール19期絵本コース卒業。トムズボックス2019冬季ワークショップ修了。 『絵本作家になるには、絵が描けないと無理ですか』(CATパブリッシング)の挿絵を一部担当。 ●YouTube:【なないろ本屋/7's BOOKSHELF】 ●Instagram:【nana_museum】