猫アンテナ狂想曲(12/15)

文・朝日千稀   絵・木ナコネコ

「よし、北へ!」
エンジン音を響かせ、キャロちゃんが行く。
市街地で曲がる道にさしかかるたび、
「もっと、早く指示を出せ!」
猿神さんにブツブツ言われ、
「オレだって、ぎりぎりにならないと、わからないんです! いつでも、サッと曲がれるように、心の準備をしておいてください!」
同じ答えを繰り返し、ようやく県道に出る。

「真っ直ぐです。しばらくは、直進で!」
飛び去る景色の中に現れた道路標識は、このまま進めば、勝川市だと告げている。
「しばらくって、どのくらいだ?」
「しばらくは、長くもないけど短くもない」
「って、どっちなんだ!」
「わかりません! あっ、猿神さん、そこ、左です」
「もっと早く指示を出せ!」

県道を左折し、広い河川沿いの道を行く。
川は、一級河川の九頭蛇川だ。
橋を渡り、さらに走ると、見えてきたのは、全面ガラス張りの大きな建物だった。
朝の光を浴びて、輝く姿は、水晶の塊のようで、とてもきれいだ。

朝日千稀 について

(あさひ かづき)福井県福井市在住。3猫(にゃん)と一緒なら、いつまでもグータラしていられる

木ナコネコ について

(きなこねこ)福井生まれ、大阪住まい。福井訛りの謎の関西弁が特徴。猫と珈琲と旅が好き。