猫アンテナ狂想曲(14/15)

文・朝日千稀   絵・木ナコネコ

・・・あっ、でも、
「それじゃあ、この採血の痕は・・・、献血の痕ですね。そうです! 昨日、しました」
するすると記憶がよみがえる。
「オレ、行きました、献血センターに。そこの新聞で、『捜し猫』の記事を見たんです。犬田さんのことも、猿神さんが怒ったことも思い出しました」

「ワシも思い出したぞ。確かに、犬田、おまえ、家に来たな」
「でも、なぜ、オレたち、覚えてなかったんだろ?」
「時折、そのように、自分のかけた催眠術の影響で、一時的な記憶の喪失的な感じになられる方もいらっしゃいますようですが、よかったですねえ、記憶がもどられて」

き、記憶がもどられて、だと!
オレが怒鳴るより早く、
「そういうのは達人とは言わん! ヘッポコと言うんだ! 時間設定もあやふやだ!」
猿神さんに怒鳴られて、犬田さんはしおしおとうなだれる。

「それなら、チャッピーは、いつ連れて行ったのですか?」
「それは、この方のおかげで、」
犬田さんは、黒岩さんに頭を下げた。
「えっ? 僕のおかげって?」
丹田さんに一服盛られたと勘違いしたオレたちが、確認のため、家を出た後、黒岩さんがやって来た。

「この方が、怪しげな道具で玄関の鍵を開けているので、泥棒だと思い、催眠術をかけてしまいました。ですが、猿神さんの後輩の方とわかりましたので、JKの好物猫缶をお渡しし、これでおびき寄せて、家の中にいる猫を連れて来てくださいとお願いしました」
「ぼ、僕は、知りません・・・」

「猿神さんに無断でJKを連れて帰るのも悪いと思いまして、自分は首輪だけでも、」
首輪は発信機のほか、チャッピーの体温や体にウイルスが侵入していないかどうかを測る記録装置も内蔵しているのです、と犬田さんは説明をはさみ、猿神さんにびびった視線を走らせる。

「・・・自分は首輪だけ回収するつもりだったのですが、この方が、猿神先輩は猫が嫌いだから連れて行くようにと、強く言われ、JKを自分に押し付けられましたので、やむなく」
「ぼ、僕は、知り・・・、あっ、思い出した」
「おのれ~~~!!!」
猿神さんが牙を剥き、おこたの天板をバシッと叩く。
「く~ろ~い~わ~、い~ぬ~た~、おまえたち、二人まとめて、成敗してやる~~!」

朝日千稀 について

(あさひ かづき)福井県福井市在住。3猫(にゃん)と一緒なら、いつまでもグータラしていられる

木ナコネコ について

(きなこねこ)福井生まれ、大阪住まい。福井訛りの謎の関西弁が特徴。猫と珈琲と旅が好き。