猫アンテナ狂想曲(9/15)

文・朝日千稀   絵・木ナコ

「先輩がおたずねの中園さんの住所は、」
と、金色の手帳を開く。
「勝川市中空町花野上2丁目9の28」
勝川市は、ここ福玉市の北に位置する市で、美しい山と川、雲上の城と呼ばれる山城や、有名な食品会社がある所だ。

「そんな遠くから・・・、車でも1時間近くかかるでしょ? チャッピーは、どういう方法でやって来たのでしょう?」
不思議に思い、聞いてみる。
だって、猫の行動範囲は限られている。
雄猫で、500メートルから1キロだという。
チャッピーは雌猫だから、もっと短い。

「捜し猫コーナー担当の同僚が中園さんから聞いた話では、チャッピーは車のボンネットの上での昼寝を好む猫だそうで、おそらく昼寝をしている時、誰かに連れ去られたのではないかと」
「なるほど、そうだったのですか。早速、明日、チャッピーを連れて行こうと思います」
そう決断を下すやいなや、
「勝川市とな? ふいっ、ふいっ、ふいっ」
猿神さんが苦しみだした。

朝日千稀 について

(あさひ かづき)福井県福井市在住。3猫(にゃん)と一緒なら、いつまでもグータラしていられる

木ナコネコ について

(きなこねこ)福井生まれ、大阪住まい。福井訛りの謎の関西弁が特徴。猫と珈琲と旅が好き。