秋色のイチョウ(2/4)

文・高橋友明  

女の子のひとりはイチョウの葉を胸いっぱいに持って、うろこ雲に向けて放ってみたり、またひとりの子は金色の絨毯(じゅうたん)の上をあちこち見てまわり、ときおり色や形の良い葉を見つけるとしゃがみ込んで拾いました。
そして持ってきたカンカンに収集しました。

男の子たちはふたりともイチョウの木に登り出します。
ただイチョウの1番下の枝は2人の背丈では届かないところにあったので、肩車をしてひとりが登り、次に登ったひとりが下に手を伸ばして同じとこまで引き上げる、というやり方で登りました。
それからはふたりとも生き生きと目を輝かせ、やっとのことてっぺんまで登っていきました。

小さなイチョウでしたが、子どもにとってはかなりの高さです。
ふたりともうろこ雲がうんと近くになったように感じました。
すずしい風を浴び、この風はあのうろこ雲の方から吹き下ろされたものではないかと疑りました。
それくらい気持ちの良い風だったのです。

しばらくすると、いつのまにか女の子はイチョウの葉で遊ぶのをやめ、男の子たちは冒険から戻り、4人そろって日のあたる野原へ座っていました。
4人で囲んだ真ん中には三段重ねのお膳(ぜん)がひろげられていました。
おむすび、鳥の唐揚げや卵焼き、サラダ、ウインナー、アスパラ、金平ごぼうと色彩豊かに盛(もり)付けられています。
4人のお昼ごはんは、意外にもとてもゆっくりと進みました。
なぜかといえばこの午後のやさしい空気のなかでは急ぐ必要など全くなかったからです。

高橋友明 について

千葉県柏市在中。日本児童教育専門学校卒業。 朝昼晩に隠れているその時間ならではの雰囲気が好きです。やさしかったりたおやかであったり、ピリッとしていたりする。 同様に春夏秋冬や天気や空模様も好きです。 そうしたものを自分の作品を通して共感してもらえたら幸いです。