秋色のイチョウ(3/4)

文・高橋友明  

やがて子どもたちはいなくなりました。
日がだいぶかたむいてきているのです。
西の空はうんと遠くにあり雲の部分だけが、赤々としていました。じきに日が沈もうとしています。

イチョウが話し出しました。
普段は物静かなイチョウも興奮(こうふん)を抑えるのが精いっぱいと見え、いく分か早口でした。
「ああ、ゆかいだったわ。女の子は私の葉を宝物のようにして遊んでくれた。男の子はわたしの幹をなでたり抱きしめたりしてくれた。わたし一番の嬉しさですわ」
昼間に喋ったのではない他のポプラがうなずきました。

そのポプラは大変な紳士で、かっこうも、枝が下から順繰りに小さくなっていって、てっぺんの一点に集中しています。しゃんとしてかっこうよく見えました。

高橋友明 について

千葉県柏市在中。日本児童教育専門学校卒業。 朝昼晩に隠れているその時間ならではの雰囲気が好きです。やさしかったりたおやかであったり、ピリッとしていたりする。 同様に春夏秋冬や天気や空模様も好きです。 そうしたものを自分の作品を通して共感してもらえたら幸いです。