秋色のイチョウ(4/4)

文・高橋友明  

月はグングン昇って、野原を真っ青に照らしました。
野原には風が渡り、風が吹いた野原の辺りは真っ青色をやや透(す)き通らせたようで、いくぶん透明(とうめい)に見えました。

先ほどとはまた別のポプラがいいました。
年寄りのポプラで幹が太く地面にどっしりと根付いています。とても威厳(いげん)のある姿に見えました。

「あんたがいてわしらがいる。それでまあるくおさまっているのだ。あんたはわしらがいるから日々を安心して過ごせるという。わしらもあんたがいるおかげでこうして誇らしく立っていられる。お互い様なのだ。あんたとわしらでやっとまあるくなれたのだ。ひとつのきれいな風景になれたのだ」

イチョウは月をながめながら胸をいっぱいにして黙っていました。
しゃべる必要はありません。
なぜかといえばふたりは今、全く同じ気持ちでいるからです。
他のポプラたちも少し笑ったようでしたが、口を開くものはありませんでした。
月がてっぺんまで登り、世界の全てを湖の底に沈めてしまった頃、イチョウは安らかな寝息(ねいき)を立てていました。

ポプラたちはそれを認(みと)めると、安心して眠りに入っていきました。  (おわり)

高橋友明 について

千葉県柏市在中。日本児童教育専門学校卒業。 朝昼晩に隠れているその時間ならではの雰囲気が好きです。やさしかったりたおやかであったり、ピリッとしていたりする。 同様に春夏秋冬や天気や空模様も好きです。 そうしたものを自分の作品を通して共感してもらえたら幸いです。