風とウメボシ(2/2)

文・結城紀子  

「昼間、あつかったから、ウメがあせをかいたんだな」
じいちゃんが、やってきてウメをひとつ、つまんだ。
「あせ?」
「だいじょうぶだ。夜はすずしいから、あせなんかすぐ引く」
「なんか、人間みたいだね」
「そうさあ。人もウメも、みんな、おひさまや風のおかげで、くらしてるんだぞ」

つぎの朝、できあがったウメボシを口に入れてみた。
「すっぱーい。しょっぱーい」
きゅーっと、口がとんがった。でも、ちょっとちがう。
「とっても、おいしくなった!」
お母さんが、うんうん、うなずいた。
「じいちゃんも、食べてみてよ」
やっぱり、しょっぱいって、おこるかな。ドキドキした。

じいちゃんは、ジロっとウメボシをにらんで、口にいれた。
「うん。こりゃあ、うまい。じょうできだぞ」
「ほんとう? しょっぱくない?」
「ウメボシがしょっぱいのは、当たり前だ」
じいちゃんのはなが、とくいげにフゴフゴうごいた。

結城紀子 について

(ゆうきのりこ) 岩手県三陸沿岸出身。中学生時代、注意散漫な生徒だったため、担任より授業中の様子をマンガで描いて毎日提出するよう命じられる。学生時代は、東洋大学アイスホッケー新聞を発行。その後、地域の子育てマップ等にて、4コママンガやイラストを発表。2005年より童話創作を始め今に至る。季節風同人、河童の会同人、日本児童文芸家協会会員。カウンセラーと福祉主事の草鞋も履いている。