2億4000万分の一のキセキ!(2/11)

文・ニケ  

新しい家に車で移動するとちゅう、まどから見えたのは360度見わたせる広大な大地です。
「ソラ、あれが地平線だよ」
お兄ちゃんは、遠くを指差しました。

「ちへいせんって何?」
「遠くにさ、陸と空がくっついてる線があるだろ? あれが地平線」
「ふ~ん。じゃあ、あの白いのはなぁに?」
「どれ?」
「白いフワフワしたやつ」
「なんだろう・・・」
「コットンだよ、綿。どこまでもどこまでも綿畑が続いてるんだよ」
前の席にすわっているパパが言いました。

「綿って畑でできるんだ!」
ソラは口をあんぐりさせました。
「まぁ、お馬さんに乗ってる人がいるわ!」
ママがすっとんきょうな声をあげました。なんと道路のわきを女の人が馬に乗って歩いていたのです。
ソラがびっくりして、まどから体を乗り出すと、馬に乗っている女の人が片手をあげてニッコリしました。
「ソラも手をふってごらん」
とパパ。
ソラはおそるおそる手をふりました。すると女の人は手をふり返してくれました。

「あのお姉ちゃん、パパのお友だちなの?」
「こっちはね、知らない人でもあいさつするんだよ」
「なんで? なんで知らない人なのにあいさつするの?」
「あなたに会えてうれしい、ってことを伝えたいからだよ」
「知らない人なのに、会えてうれしいの?」
「そりゃあうれしいよ。同じ時間に、同じ場所にいるなんて、キセキだと思わないか?」
「う~ん・・・」
ソラにはピンときません。

ニケ について

東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(学術博士)。読んだ人がちょっとだけハッピーになる言葉を奏でます。