2億4000万分の一のキセキ!(3/11)

文・ニケ  

その日、サマースクールで不思議なことがおこりました。
ソラはいつもどおり一番前の席で、ミスター・ブラウンの似顔絵をノートに書いていました。ミスター・ブラウンは黒人の先生です。低い声で子どもたちに話しかけ、笑わせます。もちろんソラには何を言ってるのかさっぱりわかりません。ところが、今日はちがいます。なんと「アイウエオ!」と言ったのです!

赤毛色のクルクルのかみの毛の男の子が、手をあげてミスター・ブラウンに質問をしました。とても体の大きい、レスリングの選手のような男の子です。ミスター・ブラウンが応えると、赤毛の男の子は体をくねらせ何か言いました。教室が笑い声で包まれました。その後もミスターブラウンと男の子のやりとりが続きました。ソラはピンポン球のように、2人の顔をかわるがわる見ていました。
そのときミスター・ブラウンが、
「アイウエオ!」
と言ったのです。おどろいたソラは、似顔絵の横に「アイウエオ」と書きました。

今度はブロンドのピンク色の口べにをした大人っぽい女の子が質問をしました。ソラはミスター・ブラウンの顔をじっとみつめました。するとミスター・ブラウンは手を大きく広げて、
「おしょーゆ!」
と言いました!「おしょーゆ」です!
ソラは急いでノートに「おしょーゆ」と書きました。ソラはこの不思議な出来事をパパに早く報告しようと、ダッシュで家に帰りました。

ニケ について

東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(学術博士)。読んだ人がちょっとだけハッピーになる言葉を奏でます。