2億4000万分の一のキセキ!(8/11)

文・ニケ  

アメリカの学校の制度は、日本とはちがうことがいくつかあります。そのひとつが「学期」です。ソラが通っていたエレメンタリースクールでは、8週間が一学期で「セメスター」といいます。8週間ごとにテストがあり、「リポートカード」という成績表をもらうのです。

ソラがはじめてテストを受けた日、外はザーザー降りの雨でした。教室中に「キュキュッ」とえんぴつを走らせる音がひびいています。一方、ソラは仏像にように固まっていました。
「(さぁ、時間よ! 答案用紙をもってきてください。出した人は帰っていいわよ〜)」
ミズ・タナーが大きな声で言いました。みんなぎっしりと書きこんだ答案用紙を、ミズ・タナーにわたしています。一方、ソラは立つことができませんでした。じっと答案用紙を見つめるソラ。真っ黒なひとみからポトポトと雨が落ちました。

その夜、ソラは家の外に聞こえるくらい大声で泣きじゃくりました。
「3か月でペラペラになるって言ったじゃん! 3か月たってるのに、ボク、ボク・・・ボク・・・ペラペラにならない! ビェ〜〜〜ン!!!」

パパはソラのほっぺを両手ではさみ、やさしくこういいました。
「ミズ・タナーが終わりです!って言うまで、テストがんばったんだろう?」
「でも(ヒック)名前しか書いてないの・・・名前だけなの。ビェ〜〜ン!!」
ソラは涙がとまりません。

「最後まで、せいいっぱいがんばったんだから、それでいいんだよ。大切なのは、とちゅうで投げ出さないことなんだぞ」
パパはソラの顔をのぞきこみました。
「でも(ヒック)3か月たったのに・・・(ヒック)ペラペラにならない。パパのウソつき〜〜〜〜!」
ソラはパパのむねをドンドンとたたきました。そして、声がかれ、なみだがかれるほど泣き続けました。

ニケ について

東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(学術博士)。読んだ人がちょっとだけハッピーになる言葉を奏でます。