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「神様、さむいのですか?」
「そうじゃ。ここは北風がとても強くてな。そら、ほこらもこわれそうになっているところがあるんじゃ・・・」

ほこらがこわれると聞いて、おにぎり君は、それはたいへんだと、ゴロン、ゴロンと動いて、ほこらの北がわにころげていきました。
すると、風がおにぎり君の体にあたって、ほこらに風があたらなくなりました。
おにぎりと神様⑥
「おお! おお! 風が止まったぞ。止まったぞ。おまえのおかげで、止まったぞ!」
神様はおおよろこび。うれしくなっておどりだしました。
「やっほほ~い! やっほほ~い!」
役に立てたのでうれしくなったおにぎり君も、神様につられておどり出しました。
「ゴロロンロ~ン。ゴロロンロ ~ン」

すると、今までだまって いたドングリも、花のタネも、カキのタネたちも、楽しくなって歌いだしました。
「ゴロロンロ~ン、ゴロロンロ~ン」
神様はおどりながら、言いました。
「おまえ様、どうだろう? できればずっとそこにいて、風よけになってもらえまいか?」

おにぎり君は、おにぎりとしては、食べてもらうことができませんでしたが、神様のお役に立てることがあるなんて、ゆめにも思ってはいませんでした。
「もちろんです。もちろんです。いつまでも、ここにいましょう」
「おお! おお! こいつはいいな! こいつはいいな!」
神様はさらに、おどりながら歌いました。
「やっほほ~い! やっほほ~い! 楽しいなったら、楽しいな」

さて、さて、さて、またしばらく行くと、見たことのある物が見えてきました。
神様をまつっている、小さなほこらです。
村人が作ったおそなえものが、たくさんほこらの前においてあります。
やっと、神様のほこらへと、たどり着いたのです。

さらに、近づいてみると、そこで、パクパクとおいしそうにおにぎりを食べている人がいました。
よく見ると、白くてきれいな服を着ている神様でした。
おにぎり君が、ゴロン、ゴロンと、近づいていくと神様が気がついて、おおあわてで、かくれようとしました。
なぜなら、神様は人間には見つかってはいけないことになっているからです。

「神様、神様。ぼくは人間ではありません。安心してくださいな」
おにぎり君はいそいで言いました。
そうしないと、かくれてしまいそうだったのです。
「ん?  おまえは、だれじゃ?」
おにぎり君ははりきって言いました。
「ぼくは、おにぎりです。神様に食べられる役目のものです。ですが、ぼくだけがどういうわけか、風にとばされて、きのう、おそなえできなかったのです」
「お、おにぎりじゃと!?」
神様はジッとおにぎり君をみて、それから、プップップッと、笑い出しました。
おにぎりと神様⑤

「こんな黒くて、丸いおにぎりを見たのは、はじめてじゃ!! ハハハ・・・」
おにぎり君は、はて ?と、首をかしげ、よくよく自分の体を見てみました。
すると、どうでしょう。
あんなに白かった体が今では、まっ黒になって、土や、砂や、虫のありんこまで、自分の体にくっつき、すみついています。
しかも、三角だった形は、まあるく、まあるく、小さな山のようになり、ほこらよりも大きくなっていたのです。

さて、さて、またしばらく行くと、今度はカキの木がないのに、カキのタネがいっぱい落ちていました。
カキのタネたち は、いっしょうけんめいに土をほっていましたが、土がかたいのか、思うようにほれません。
おにぎりと神様4「どうしたんだい?」
おにぎり君はカキのタネたちにきいてみました。
「土がかたくて、ねむれないんだ。おふとんがふわふわじゃないと、僕らはねむれなくて大きくなれないんだよ~」
「それはこまったね」
カキのタネたちが言います。
「う~ん。こまった、こまった。こまった、こまった。ところで、君はどこへいくんだい?」
おにぎり君は今までのことをカキのタネたちに話しました。

「だから、神様のところに行くんだよ」
「神様か。神様のところなら、さぞかし、こんなに土はかたくないだろうな~」
うらやましそうに、カキのタネたちは、おにぎり君を見ました。
「よかったら 、いっしょに行くかい?」
おにぎり君はさそってみました。
「わーい!!ありがとう!!」

しばらく行くと、今度は水たまりにいた花のタネに声をかけられました。
「おにぎりさん、おにぎりさん、助けてください!」
「どうしたの?」
「水たまりにういて、根が下ろせないの。これでは、お花がさかせないわ」
みると、水たまりは大きくて、かわくのに、時間がかかりそうです。
おにぎりと神様3「それは、かわいそうに・・・。いいよ! 助けてあげるよ !」
おにぎりはすぐに両手をさし出すと、花のタネをすくって助けてあげました。
「ああ。助かった~。おにぎりさん、ありがとう。ねえ、ねえ、おにぎりさん、このあたりでお花がさいているところはないかしら?」
「このあたりでは、見かけないな。神様のいるところなら、もしかしたらさいているかもしれないよ」
おにぎり君は今までのことを話しました。

「まあ、すてき。きっと、神様のところなら、いっぱいの花がさいているかもしれないわ。私もいっしょに連れて行ってくださいな」
「いいよ。いいよ。」
おにぎりはこころよく引き受けました。
「わ~い。ありがとう」

「ゴロン、ゴロン」「ゴロン、ゴロン」
しばらく、おにぎり君が転がっていくと、大きな川のそばに、ドングリが落ちていました。
ドングリは、ぬれた体を起こして、こう言いました。
「おにぎりさん、おにぎりさん、どこにいくの?」
おにぎり君は、ドングリに今までのことを話しました。

「それは、たいへんだね~」
「そうなんだ! そうなんだ! だから、神様に会いに行くんだ。聞いてみれば、一番早いのさ」
「神様のところなら、川は近くになかったね。ねえねえ、僕もつれて行ってよ! 僕は山育ち、ここは川だから育っても、大きな木にはなれないんだ!」
ドングリは言いました。
「ここの土はあまりにやわらかくて、大きくなってもたおれてしまうんだ。せめてもう少し、かたい土じゃないとね。根を下ろせないんだ!!」
おにぎりと神様2
「それなら、いっしょに来るかい? 乗せてあげるよ!」
おにぎり君はこころよく引き受けました。
「わ~い! ありがとう~!!」

むかし、むかし、 あるところに、小さな小さな村がありました。
村には、小さなほこらがあってそこには神様が大切にまつられていました。
村では、年に1回お祭りをし、この1年たくさんのお米が取れたことに感謝をして、たくさんのおそなえものを、神様にさしあげます。

今日はそんなお祭りの日でした。
村人はたくさん取れたお米を神様に食べてもらおうと、せっせせっせとおにぎりをにぎっていました。
なにせ、この村の神様は大のおにぎり好き。
村人をあげての大仕事です。

子供たちはおおはしゃぎで、じゃまをしては大人たちにおこられていました。
そんな、みんながバタバタしているときでした。

ビュー、ビュビュビュ~
とても強い風が村人をおそいました。
「あれぇ~!」
だれもが、服やかみをおさえていたその時、ひとつのおにぎりが風にあおられてコロンコロンと、転げてしまいました。

「ただいま~」
チョコレートを食べて、ぼくたちはおうちにもどった。
「あら、早かったのね」
ママがげんかんに出てきて・・・。
「ちょっと、たかし! どうしたの、そのケガ!?」
ぼくのケガを見て、びっくりしてかけよってきた。
「あのね、テツヤくんが、チョコレート、とったの。作戦で、とりかえしたんだけど、にいちゃん、たたかってケガした」
つよしが、ママ・・・いや、しれいかん・・・やっぱりママでいいや。ママにほうこくした。

「にいちゃん、だぶろーさんみたい。かっこいい!」
「だぶろーさん・・・? ああ、ダブルオーセブンね。パパの好きな・・・。とにかく、ちゃんと洗わないと」
エージェント2 4-1ママはぼくをお風呂につれていった。シャワーで水を出して、ゆっくりとキズにかける。いたい。しみる。
「う、う、う・・・。うわああ~~~~ん」
ぼくは、ここではじめて、泣いた。
キズがいたいのとか、テツヤをおびきよせていたとき、ほんとはこわかったこととか、いろんなことがぐちゃぐちゃになって、大声で泣いた。
「よしよし、弟を守ったのね。がんばったわ!」
ママがやさしく言ってくれて、またいっぱい涙が出た。

「いーけないんだ、いけないんだ! テツヤが、つよしからチョコレートとった!」
ぼくは、パッと姿を表して、どなってやった。
チョコレートの包みを開けようとしていたテツヤが、びくっとしてこっちを見た。

「テツヤのママにいいつけてやる! おばさ~~ん! テツヤが、つよしからチョコレートとったーーー! 手にもってるよーーー!」
ぼくは、さけびながら、マンションの表に向かって走り出した。
「ま、まて、おまえ!」
テツヤがあわてて追ってこようとする。

あいつめ、チョコレートを持ったままじゃないか。
ショウコインメツしてくれなきゃ、こまる。
「おばさん、みてーー! テツヤがチョコレートつよしからとったーーー! 手に、持もってるよーーー!」
ぼくはふり返って、ひっしでさけんだ。チョコレートを持ってこられちゃ、この作戦は失敗だ。

テツヤがあわてて、チョコレートを近くの自転車のかごにかくした。
よし! ぼくは、また走り出した。
あとは、ぼくが がんばって逃げないといけない。

「おれ、チョコレートなんてもってないぞ! そいつ、うそつきだ!」
テツヤが、ぼくを追いかけてきた。ぼくは、いっしょうけんめい走った。
テツヤは、ぼくよりずっと大きい3年生だから、そのうちつかまっちゃうけど、なるべく遠くまで逃げないといけない。
息が苦しい。もうちょっとで、広場だ。何とか、広場まで・・・。

「にいちゃん・・・。しれい ないのに、えーじぇんと、いいの?」
つよしが泣きながら聞いてきた。
自分が泣かされているというのに、変なところに気がつくやつだ。

「ママ・・・じゃない、しれいかんはぼくに、『つよしのめんどう、よ~く見てやってね』っていったんだ。だから、おまえがとられたチョコレートをダッカイするのは、ちゃんと しれいがあるんだ」
ぼくがそう教えてやると、つよしはちょっとニコッとした。
つよしはあまえんぼだから、ぼくがめんどうみてやるとよろこぶんだ。

「ようし、まず、テツヤをみつけるぞ。それから、ダッカイのさくせんをたてるんだ」
ぼくたちは、テツヤが逃げた方へ行ってみた。
広場のおくの道に入っていったはずだ。だけど、テツヤはもうそこにはいなかった。
エージェント2 2-1「テツヤのやつ、どこへいった?」

ぼくは、考えた。
りっぱなエージェントは、考えるのも得意だ。
てきがどこに行ったか。こういう時は、自分もてきになったつもりになるのだ。
ぼくは、テツヤのつもりになってみた。

ぼくたちは、エージェントだ。
エージェントっていうのは、ひみつのしれいをもらって、かつやくする人のことだ。
ぼくはエージェントたかし。もう小学校1年生のお兄さんだ。
弟のエージェントつよしは、あと少しで5さいだ。

今日は、しれいかんから ひみつのしれいが出なかった。
ぼくたちはおとなりのマンションであそぶことにした。
おとなりのマンションは、表に小さな広場があって、マンションの子たちとあそんだりできるのだ。

「にいちゃん、はやく~」
「ちょっとまってよ。ママ~、くつひも、むすんでよ~」
ぼくはエージェントだが、いつもはふつうのどこにでもいる1年生なのだ。
くつひもがうまく結べなくても、まぁ仕方ない。
「ぼく、さきにいってる~」
つよしは、待ちきれなくて、先に行ってしまった。
「つよし、チョコレートひとりでたべるなよー!」

つよしには、おやつのチョコレートを持たせてある。広場で食べるのだ。
本当は、ぼくが持っていきたかったんだけど、つよしがどうしても持ちたいっていうから、持たせてやった。ぼくってエライ。
エージェント2 1スニーカー「ひものないくつで行ったらいいのに」
ママがやっと出てきてくれた。
「だめ。きょうは このくつをはくって きめてたの」
ぼくが足をつきだすと、ママはくつひもを きれいなちょう結びにしてくれた。
「いってきま~す」
「いってらっしゃい。つよしのめんどう、よ~く見てやってね」
ママの声を背中で聞きながら、ぼくはおうちを飛び出した。