WEB版 Sweet Harmony展(3/3)

文・田村理江   絵・小野寺美樹

それを見つけ出したのは、宝探しごっこが大好きな、この国の幼い王女様。
「こーんなところで、お宝、発見!」
箱を、女王様のもとへ、勇んで運びました。

女王様は、王女様のやわらかな髪をなでながら、言いました。
「これは、おそらく苺でしょうね」
「あら、果物はみんな、茶色なのに、変だわ」
「昔・・・ひいひいおじい様の時代は、苺と言えば、このような姿だったと、絵を見せていただいたことがありますよ」
「苺なら、これ、食べられるってことでしょう?」
怖い物知らずの王女様、いきなり箱を開けると、かわいいおくちで、パクッ。

「うーん、すっぱい」
まゆを少し寄せ、それから、
「でも、最高に美味しい!」
と、にっこり。

このことがあってから、スィート王国では、果物のチョコ・コーティングがすたれ始めたんですって。
役目が減ったエンジェルたちは、みんなの願い事を叶える仕事に専念して、スィート王国はますます豊かになったそうですよ。
(おわり)

田村理江 について

(たむら りえ)東京都生まれ 成蹊大学文学部日本文学科卒業。日本児童文学者協会第15期文学学校を終了。 第6回福島正実記念SF童話賞を受賞して、『ガールフレンドは宇宙魔女』(岩崎書店)を出版。 児童書の作品に『リトル・ダンサー』(国土社)、『夜の学校』(文研出版)、『魔の森はすぐそこに・・・』(偕成社)など。絵本の作品に『ふなのりたんていラッタさん』(フレーベル館)、『ハンカチのぼうけん』(すずき出版)など。 HP:田村理江のページ

小野寺美樹 について

(おのでら みき)1995年千葉県生まれ。学習院大学卒業後、武蔵野美術大学造形学部に編入。2012年春から毎年、『BOOK展』(ギャラリーウシン)に絵画作品やポストカードを出品。