『あなぐまのクリーニングやさん』
正岡慧子 作
三井小夜子 絵
PHP研究所
この作品は、私が童話作家を目指そうと書き出した頃に、著者の正岡慧子先生からいただいたものだ。何度も何度も読み返して、暗記するくらい読んだことを覚えている。楽しく、そして感動的であるだけでなく、創作の勉強にもなる作品なのでぜひ紹介したい。
あなぐまさんは、腕のいいクリーニング屋さん。仕事は丁寧で、取れかけのボタンや小さなほころびもなおしてくれて、とっても親切、サービス満点。だからいつもお客さんがひっきりなしで、あなぐまさんは、大忙しなのだ。
ある日、評判を聞きつけて、遠い町からライオンさんが燕尾服のクリーニングを頼みにくる。ライオンさんの大事な燕尾服を一生懸命きれいにしようとするのだが、あなぐまさんは大失敗をしてしまう・・・。
この作品は、明るく楽しく、丁寧に仕事をすることの大切さを教えてくれる。そして失敗や過ちをしてしまったとき、素直に謝ることの大切さを子どもだけでなく、私たち大人にも教えてくれるのだ。ぜひお子さんといっしょに読んでほしいと思う。
三井小夜子氏の絵も色使いが温かで、登場人物たちの表情が豊かに描かれていて、とてもいい。本作の制作途上で、著者と画家が何度も意見交換をしたのであろう。
著者の正岡慧子先生が、当サイトの「絵本・童話 創作のツボ」欄の「ストーリーの盛り上げが難しいのですが」で、転や結末の優れた作品を読むことを推奨している。本書こそ、ページをめくったときの「おおっ~」という驚きや結末の感動が十二分に表現されていると思う。創作を志す方は、本書とあわせて「絵本・童話 創作のツボ」を読んでほしい。