サワガニの理容室(5/6)

文・ねこはるさめ  

それからおだやかに話しかけます。
「おきゃくさまは読書をなさいますか?」
とつぜんのしつもんにハリネズミはとまどいましたが、「はい」と返事をしました。

「家にこもっていますから、本を読むことしか楽しみがありませんので」
「どんな本がお好きなんでしょう」
「そうですねぇ・・・、せめて本の中だけでも明るくありたいと、ハッピーエンドばかりの本を読んでいます」
「いいですねぇ、わたしもハッピーな物語は好きですよ。仕事につかれて気分がおちこんだ時に、そのような本を読むと元気が出てきます」

「ですよね! あっ、いや、・・・ぼくもそんな世界で生きてみたいとゆめ見ているんです」
「本を読む時に、お茶はしますか? わたしは紅茶とクッキーをかたわらにおいて、本を読むんですよ」
「あっ、おんなじです! ぼくも食べものと飲みものは読書にかかせません」 「どんな場所で本を読みます? わたしはベッドの上でうつぶせで、ゴロゴロしながら読んでいます」
「ぼくはカーペットの上にねそべります。カーペットのちょっとかたい、けれどもこもこした感じが心地よくて」

「ああ、分かります。たしかにやわらかいものもいいのですが、ちょっとかたくてつめたい感じも悪くないんですよね」
サワガニとハリネズミは小さく笑い合いました。

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ねこはるさめ について

和歌山県出身。ボランティアでオリジナル童話の読み聞かせ活動をしています。それ以外にも、少し大人びた児童文学テイストな作品を創作。人がいだき育む幻想を紡いだ短編を好んで書きます。 ホームページ:滑空舎 http://kakkusha.sakura.ne.jp/media/