幼年童話の書き方16 ~第2部「名作に学ぶ」その4

その4『きらちゃんひらひら』


きらちゃんひらひら
(北川チハル・作 河原まり子・絵 小峰書店 2005年)

わからないことだらけ

主人公のきらちゃんは、山の中に家があったので幼稚園や保育園に通ったことがありません。そんなきらちゃんが小学校に通うことになりました。楽しみにしていたのに水疱瘡で入学式には出られず、1週間遅れで生まれてはじめての集団生活が始まったのです。

登校一日目、きらちゃんはわからないことだらけです。先生を見るのもはじめてなら、教室を見るのもはじめて。授業中のルールなんてなにも知りません。なにかするたびにマリ先生に注意されてしまいます。

でも、きらちゃんはへっちゃらです。担任のマリ先生が「がっこうでは、わたしを おかあさんだと おもって、なんでも きいてちょうだいね」と言ったので、学校のおとうさん、おじいちゃん、おばあちゃんを探しに、ひとりで学校探検です。

わたしは小学校に勤めていたときに1年生を4回担任しましたが、きらちゃんのような子は見たことがありません。みんな、保育園や幼稚園で集団生活の練習をしてくるので、「おりこうさん」なんですね。

中には授業中によそごとをしていたり、立ち歩いたりする子もいますが、その子たちはそれがしてはいけないこととわかっていても我慢できなくなってしまうわけで。きらちゃんは違います。困った顔のマリ先生にはおかまいなく、どこまでも自由奔放です。

次のページに続く

野村一秋 について

(のむら かずあき):1954年、愛知県に生まれる。教員として小学校に勤務した経験のもと、子どもの目線に立った作品を生み出している。日本児童文芸家協会会員。日本児童文学者協会会員。日本文藝家協会会員。主な作品に『天小森教授、宿題ひきうけます』(小峰書店)、『しょうぶだ しょうぶ!』(文研出版)、『ミルクが、にゅういんしたって?!』『4年2組がやってきた』(共にくもん出版)などがある。