『たびいえさん』著者・北川チハルさんに聞く(2/2)

北川さんの発想の方法をお聞きしました。そしてデビューを目指す皆さんに応援メッセージをいただきました!

― 書くことを楽しんでください ―

――  たくさんの作品を書かれている北川さんが物語を作る際、どのように発想するのでしょうか? 筆記用具を近くに置いてあるとか、創作のコツがあれば教えてください。

私の創作のコツは、毎日の生活を大切にすること、です。たとえば、頼みもしないのにやってきてしまう繰り返しの毎日の中でも、ささやかな喜びを見つけること。つらい状況でも生きることをできるだけ楽しんで、歌ったり笑ったりすること。世の中わけわかんないことばかりでも考えるのはやめないこと。ベストは無理でもベターを探していくこと。愛するものから顧みられなくても相手の幸せを願い、自分の幸せは自分で手に入れること。泣きたいときは泣くこと。よく働きよく遊ぶこと。疲れたら休むこと。正直に向き合うことのできる人とすごす時間を作ること。理解されないことを怖れずに自分の感性を信じて素直に書くこと。そんなふうに意識して暮らしていれば、たとえ人生がうまくいかなくても、創作の発想は尽きません。

ちなみに私は創作に関するメモをとることは滅多にありません。たまにとっても読み返すことはまずないです。メモなどしなくても、心に焼きついて忘れられないことを書いていこうと思っているので、筆記用具がそばになくてもへっちゃらです。

――童話や絵本を創作するとき、登場人物のキャラクター設定が重要と言われます。北川さんが登場人物のキャラクターを考えるとき、大切にしていることは何でしょうか?

たびいえさん書影

北川チハル(きたがわ ちはる) 愛知県生まれ。保育士を経て絵本・童話作家になる。『チコのまあにいちゃん』(岩崎書店)で児童文芸新人賞受賞。『おねえちゃんってふしぎだな』『ともだちのまほう』(ともにあかね書房)、『はなちゃんのはなまるばたけ』(岩崎書店)、『わたしのすきなおとうさん』(文研出版)、『いちねんせいがあるきます!』(ポプラ社)、『ハコくん』(WAVE出版)、『いないいないおかお』『みてみておてて』(ともにアリス館)などの作品がある。京都府在住。 北川チハルWEBSITE

うーん、「人間らしさ」かな? 私たち人間は、乗り物とか動物とか人間ではないキャラクターにも人間性、人間味を求めようとしますよね。それは私たちをとりまく世界のすべてのものを仲間として受け入れようとする、柔軟な力があることのあかしだと思うんです。そして、その柔軟な力を発揮して、物語をおもいっきり自由に楽しむことができる。だからキャラクター作りも、人間らしさを大切にしながら、頭と心をうーんと柔らかくして、自由に楽しみたいですね。

あとは、自分自身、そのキャラクターを愛せるかどうか。幼いうちから親しむ童話や絵本の物語は、愛の文芸・文学だと思うから、悪役やダメダメトホホなキャラクターでも愛がなければ書けないと思っています。

ただ、本当に大切にしなければならないのは、キャラクターを考えるときではなくて、それ以前のことだと思うんですよね。いろんな出会いをして、いろんな人生にふれて……、小さな体験でも、一つひとつの丁寧な積み重ねが、魅力的なキャラクター作りの源泉となる、そんなふうに思っています。

―― 最後にデビューを目指してがんばっている皆さんへ応援メッセージをお願いします。

書くことを楽しんでください。ずっと好きでいてください。目的地だけでなく、そこへ向かう道を、いま立っている足もとを、あなたをとりまく世界の景色を、よーく見て、感じて、愛して、味わいながら歩いて行ってください。

自分が今どこにいるのか、どこへ向かっているのか、迷って辛くなったら、立ち止まって、好きなだけ休んでもだいじょうぶですよ。この世界、デビューも引退も年齢制限はないし、テクニックや経験は、どれだけ休んでも、ゆっくりでも、回り道をしても積み重ねていけます。ただ、どんなときも感性だけはなくさずに、あなたにしか書けない物語を探しつづけていってくださいね。

あなたのデビューまでの道のりが、よいたびでありますように!