動物園の人気者は「ゾウ」さんです。幼稚園や小学校1年生では「ゾウさん」(まどみちお・作詞、團伊玖磨・作曲)の歌を覚えます。そして4月には6年生と1年生がそろって動物園を訪れます。
神戸市立王子動物園を入ると、すぐ目につくのはゾウさんの大きな身体です。このゾウ舎にはオスの「マック君」と、北欧のラトビア共和国のリガ市動物園で生まれ育ったメスの「ズゼちゃん」が暮らしています。
このゾウさんの前で子どもたちは、大きな声で楽しそうに「ゾウさん」の歌を歌います。
私は動物園長をいているときは、微笑みながら子どもたちの後に立って歌を聴いていたものでした。
そのような中、私はズゼちゃんがどのようにして王子動物園にやってきたのかを子どもたちに知ってほしいと思っていたのです。
じつはズゼちゃんがやってきた経緯は、1995年1月に起こった阪神・淡路大震災にあります。
復興の最中、神戸市長さんは、子どもたちの大好きな若いゾウさんを見せて元気取り戻してもらいたいと思っていました。
そこで、神戸市とリガ市は姉妹都市だったので、若いズゼちゃんをマックくんのお嫁さんにほしいと連絡されました。
リガ動物園にもいろいろな事情がありましたが、リガ市民の理解と応援を受け、ズゼちゃんは海を渡って神戸に来ることになりました。
私は、神戸までの長い道のりをズゼちゃんと共にしてきた飼育員のザイフェルトさんを登場させ、創作童話として新作の嵐には発表したのです。
そしてこの度、書籍として出版されることになり、嬉しく思っています。この本をお読みいただきズゼちゃんの長い旅路を共感していただければ、なお一層ズゼちゃんのことを好きになってもらえるものと思います。