「小鬼とな! あるじ様、ごあんどを! われらがとらえまする!」
男たちは大介に向かって、すらりと、こしの刀をぬきました。
「わ、なんでや!」
とっさに、大介は小屋の中に飛びこんで、とびらを閉め、かんぬきを下ろしました。
男たちは、どんどんと、とびらをたたき、今にも、おし入ってくる勢いです。
「いでよ、小鬼め!」
「どうしよう」
見回しても、うらしま館にもどる道は見当たりません。
その時、小屋の外が、急に、静かになりました。
「あれ、また、だれか来たみたいや」
すき間からのぞくと、ひときわ背の高い、ひげもよろいも立派な、えらそうなさむらいが女の人のそばに立っていました。
「あの人たちの言葉、何でやろ、さっきより、ずっと、分かりやすいぞ」
大介は聞き耳を立てました。
「すると、小鬼のやつは、名前を名乗れと申したのですな。なんと無礼な。この辺りの海をおさめるワタツミ族の奥方、浦島かいたこ様に向かって!」
「はい。さしずめ、私をさらって、食うか、よめにでもしようと思ったのでしょう。あな、おそろしや。お役人様、どうぞ、とらえて、うんと、こらしめてくださいませ」
女の人は着物のそでで目頭をおさえ、「よよよ」と、大げさに泣いています。
「あんたなんか食うかいな。けど、やった、わかったぞ!」
大介はタブレットをパンとたたいて、さけびました。
「浦島太郎のお母さんの名前は、浦島かいたこ!」
ピンポーン!
とたんに、何かが大介の背中を、どんと、おしました。