同じころ、美里は夏の浜辺に立っていました。
そこは高巣海水浴場によく似ていますが、人っ子ひとりおらず、おきには船もセーリングボードも見当たりません。
「すごく静か。それに、なんだか、空がずいぶん青い」
ピカンと、タブレットが光り、5問目が現れました。
「『浦島太郎が助けたカメはオスだったでしょうか、それとも、メスだったでしょうか?』ええ! こんなこと、どうやって分かれって言うの?」
その時、砂浜のつきるところ、あらあらしく波がくだけている岩の上に、だれかが、のっそり、立ち上がりました。
つりざおを持ち、ポニーテールにこしみのスカート。絵本や物語のさし絵で何度も目にしたあのスタイルです。
「あの人、浦島太郎だ! だれかと話している。カメだ! わ、つりざおをおいて、カメに乗ろうとしている。今から竜宮城へ行く気なんだ!」
美里はあわてて、走り出しました。
「おーい、待って、浦島太郎! 行かないで! そのカメ、オスなの? メスなの? 教えて!」
砂地は走りにくく、美里は足をとられて転びました。
その間に、浦島太郎はカメにまたがり、どんどん、おきに出ていって、ついには、ぷくんと、見えなくなりました。