美里がいそにたどりついた時には、岩の上に太郎のつりざおとが、ぽつんと、残されているだけでした。
美里は太郎の消えた海をうらめしく見つめました。
「もう、家に帰れないのかな。あたしたちがいなくなったら、お父さんやお母さん、どんなに心配するだろう」
なみだがこみあげます。
はなをすすりながら、もどろうとして、美里はサンダルが無くなっていることに気が付きました。
岩の上や小石がごろごろしている潮だまりをはだしで歩くのはつらいことでした。
目をこすって、きょろきょろ、サンダルを探していると、美里は、潮だまりに、ポチャポチャ、子ガメがいるのを見つけました。
「あれ!」
砂浜に目をやると、小さな生き物の通ったあとが、いく筋もありました。
美里は、はっと、思い出しました。
「そういや、いつだったか、子ども新聞で読んだっけ。陸に上がってくるウミガメは卵を生むメスだけだって!」
それは卵からかえった子ガメたちが夜の間に大急ぎで海に走ったあとでした。
美里はタブレットに答えました。
「メス!」
ピンポーン!
何かが美里のせなかを、どんと、おしました。