「分かりました。すぐに行きましょう。がめ島がしずむ前に新一ちゃんを助けなくちゃね」
美波夫人の言葉に、美波氏もうなずいて、車のキーをチャラチャラさせながら、表に出て行きました。
「おれらも行くぞ」
美波夫妻の乗った青色の車を、トヅカの赤い車が追いかけます。
その間にも、美里と大介は、はらはら、タブレットの時計を見つめました。
「ああ、30分、切っちゃった! がめ島が動き出してまう」
「だいじょうぶや。大介、ちょっと、まど、開けてみい」
トヅカが、にやにや、言います。
「え?」
大介が車のまどを開けると、ガガガガ、ゴゴゴゴと、にぎやかなエンジン音が飛びこんできて、たくさんの漁船ががめ島を取り囲んでいるのが見えました。
「さっき、お前のあにきがおやじさんに電話して、漁協の船、総出で、がめ島を止めてくれるよう、たのんだんや」
「ありがとう、おにいちゃん!」
トヅカは、びっくり、目をむきました。そして、
「おれ、大介が浩一を『おにいちゃん』と呼んだの、初めて聞いたかも!」
と、大笑いしたので、浩一は、ぽこんと、大介の頭をたたきました。
車を車道に置き、がめ島の前まで走ったみんなは、美波夫人ががめ島に向かって、りんと、立っているのを見ました。