「よくわかりました。佐熊山策作さん。あの、ところで・・・」
「なんや?」
「もう、観察はよろしいのでしょうか?」
「観察?」
「先ほど、よーく見てみろ、とおっしゃいました」
「んっ? 覚えとらんがな・・・」
じいさん、佐熊山策作さんは、遠い目をして空を見上げる。
「さっき、あたしが佐熊山策作さんの前を通り過ぎようとした時、あたしを呼び止めて、」
「ふむふむ」
視線が、空を漂い始める。
「・・・あの、そこまでは、覚えてらっしゃいますか?」
「おぼろげに」
ですと!
はーっ。
「で、あたしが、あたしですか、と言うと、よーく見てみろ、と」
策作じいさんの、視線が、空から、あたしの顔に移動する。
瞳が、キランと輝きをます。
「ははーん。おまえ、キツツキ、なんや独り言の多いやっちゃわ、思うてたけど、わいを観察してたんか」
「はあ、ここにはそんな風習があるのかと」
「アホやな、おまえ」
「はああーっ???」
「そんなおかしな風習、あるわけないやろ! わいが、呼んだ時、この通りに、おまえ以外、だれかおったか?」
「いいえ」
呼ばれた時も、長々長々長々と名前の説明されてる間も、だれもいなかった。
こんな時に白状するのもなんだけど、あたしは、勘違いしちゃうことが、激しく多い。
あたしは、やっと、理解した。
最初から、こう言えばよかったんだ。
「はい、なにか御用でしょうか?」