「ほーか、ほーか。見物か・・・」
それにしても、策作じいさん、話しながら後ろ歩き続けてるけど、この石畳かなり凸凹してるのに、つまずかないか?
なんて、ちらりと思いながら、新聞社で聞いた知識を披露する。
「3日かけて、舟を編み、最終日には海に出すんですよね?」
「ほうや」
どこで、どうやって、舟を編むのか?
詳細は不明だが、時期と地域はわかってる。
お盆に現地に入り、情報を得ながら行動すればいいだろう。
安直に考えてとった行動は、ここで策作じいさんに声かけられるまで、こちらから声をかけた人たちには無視されて、安直すぎたか、と後悔しかけたけれど、結果オーライ。
情報は、こんな近くに転がっていた。
と、思ったのは、あまかった。
「ほんでもな、おまえ、キツツキは、でけん」
策作じいさんの歩が止まる。
「でけん?」
「見物は、無理ってことや」
ああ、出来ないってことかと、納得している場合じゃないが、
「ほれ、まずは、そこからスイカをあげて、切って食え」
と言われれば、思わず、返事が弾んでしまう。
「はいっ! そこに浮かんでいるやつですね!」
玄関の手前に湧き出している清水は、さほど大きくないが、清冽な水が満ちている。
手の先でふれただけで、ほてった体から、熱がすーっと引いていく。
スイカを持ち上げると、湧き出る水に、底の砂が踊る様子が見える。
水は、どこかに流れてゆくこともなく、あふれ返ることもなく、そこにあるから不思議な感じがする。