小さな1切れ、小皿に入れて、超スピードで、仏間に持っていく。
空いたスペースにそれを置き、手をあわす。
見上げれば、額に入った写真が並んでいる。
お仏壇に向かって左側の写真は、比較的、新しい。
厳めしそうなおじいさん。
ひっつめ髪のおばあさん。
その横は、すごく新しい。カラー写真だ。
やわらかにほほえむおばあさんは、色白で、ふっくらしていて、とても可愛らしい。
もしかして、この人が、佐熊山しのさん?
そういえば、さっき、策作じいさん、おばあさんのエピソード語るとき、語りが、過去形だった。
「・・・と、ばあさんが、言っていた・・・」
そうか、そうだったのか。
なんとなく納得しつつ、右側に、目を転じれば、幼い、おかっぱの女の子。
「こっち側のは、かなり昔っぽいな」
たっぷり口髭たくわえた細面のおじさんの隣には、丸顔のおばあさん。
柔和な印象の中年紳士の次に目をやると、いたのは、笑顔の少年だ。
「わ、うわ・・・、カ・・・、カッコ、よすぎる!」
もっとよく見ようと、立ち上がる。
変わった帽子を、かぶっている。
耳当てがついて、頭の上に引き上げてあるのは、ゴーグルのようだ。
きりりとした眉の下、切れ長の瞳は、聡明そうな光をたたえている。
困った・・・、目が、離せない。
この人が、生きている人だったらいいのに!
そしたら、あたしも、この人と、蜜柑や太朗みたいにステキに・・・、
「わいの兄や」
突然、背中にかけられた声に、不埒な想いがすっ飛んだ。
「お兄さん、ですか・・・」
「そや。ここで、スイカ食おう。持って来い」