ぜんぜん不思議じゃなかった3日間(2/15)

文・朝日千稀   絵・木ナコネコ

小さな1切れ、小皿に入れて、超スピードで、仏間に持っていく。
空いたスペースにそれを置き、手をあわす。
見上げれば、額に入った写真が並んでいる。
お仏壇に向かって左側の写真は、比較的、新しい。
厳めしそうなおじいさん。
ひっつめ髪のおばあさん。
その横は、すごく新しい。カラー写真だ。
やわらかにほほえむおばあさんは、色白で、ふっくらしていて、とても可愛らしい。
もしかして、この人が、佐熊山しのさん?
そういえば、さっき、策作じいさん、おばあさんのエピソード語るとき、語りが、過去形だった。
「・・・と、ばあさんが、言っていた・・・」
そうか、そうだったのか。

なんとなく納得しつつ、右側に、目を転じれば、幼い、おかっぱの女の子。
「こっち側のは、かなり昔っぽいな」
たっぷり口髭たくわえた細面のおじさんの隣には、丸顔のおばあさん。
柔和な印象の中年紳士の次に目をやると、いたのは、笑顔の少年だ。

「わ、うわ・・・、カ・・・、カッコ、よすぎる!」
もっとよく見ようと、立ち上がる。
変わった帽子を、かぶっている。
耳当てがついて、頭の上に引き上げてあるのは、ゴーグルのようだ。
きりりとした眉の下、切れ長の瞳は、聡明そうな光をたたえている。
困った・・・、目が、離せない。
この人が、生きている人だったらいいのに!
そしたら、あたしも、この人と、蜜柑や太朗みたいにステキに・・・、
「わいの兄や」
突然、背中にかけられた声に、不埒な想いがすっ飛んだ。
「お兄さん、ですか・・・」
「そや。ここで、スイカ食おう。持って来い」

朝日千稀 について

(あさひ かづき)福井県福井市在住。3猫(にゃん)と一緒なら、いつまでもグータラしていられる

木ナコネコ について

(きなこねこ)福井生まれ、大阪住まい。福井訛りの謎の関西弁が特徴。猫と珈琲と旅が好き。