❖魔法のような力
この絵本を読んで、子どもの頃に私自身が感じた「ひとりぼっちの怖さ」を思い出しました。普段は家族の声が響く家が、静まり返ったときに感じる独特の心細さ。それは、リビングルームがいつもより広く暗く感じられたり、何気ない家の一部が急に違う場所のように見えてしまったりする、特別な感覚でした。
この絵本には、そんな子どもならではの感覚がとても丁寧に描かれており、まるで当時の私の心をそのまま映し出しているように感じました。
その描写は、子どもが不安をどう克服しようとするのかをリアルに映し出しており、心が強く共鳴します。また、家の中という日常の空間で、怖さを空想の力で乗り越えようとする姿には、読者としての温かい気持ちが芽生えました。
子どもの空想力は、怖さを大きく膨らませるだけでなく、それを楽しさに変えてしまう魔法のような力を持っています。この絵本は、そうした子どもの豊かな感性を美しい絵とストーリーで見事に表現しています。
特に印象に残ったのは、大人の目から見れば「ただのこたつ」でも、子どもにとってはそれが守られた世界へと映し出されたページです。親子で一緒に読み、「こんなとき、あなたも怖かったことある?」と話をすることで、新しい発見や共感が生まれるのではないでしょうか。
日常の中にあるさりげない瞬間を、これほど繊細に描いているこの絵本は、読んだ後に心を暖かくしてくれます。親子での会話が広がり、思い出を共有できるきっかけになる、家族に寄り添う優しい物語だと感じました。