「シメシメ。おいしそうなタマゴだなあ。おやのいないあいだにいただくとするか」
あおだいしょうのニョロタは、したなめずりしました。
ほかのあおだいしょうは、こいウグイスいろをしているのに、ニョロタはまっ白ないろをして生まれてきました。
そのために、きょうだいや、なかまから、へんなやつといわれ、バカにされ、いじめられてそだってきたのです。
「もう、こんなところとは、おさらばして、おいらはひとりで生きていくさ」
そうひとりごとをいいながら、ニョロニョロはっているときに、ぐうぜん見つけたとりのタマゴでした。
「いち、にぃ、さん、しぃ、ご。おっ、5こもあるぞ。これだけたべりゃあ、おなかもいっぱいになるだろう」
ニョロタは、1こずつあじわいながらタマゴをたべました。
「やっぱりタマゴはさいこうだねえ」
4このタマゴをたべおわり、さあ、いよいよさいごの5こ目をたべようとした、そのときです。
パリン
タマゴがわれて、ピヨピヨいいながら、きいろのヒヨコが生まれてきました。
「うわぁ、な、な、なんだあ」
ニョロタはびっくりして、大きくあけていた口をとじるのもわすれて、あとずさりしました。
「ピヨ。あっ、おかあさん、こんにちは」
ヒヨコは目のまえにいたのが、ニョロタだったので、すっかりニョロタをおかあさんだとおもってしまったのです。
「よ、よせやい! オレさまはおまえのおかあさんなんかじゃないやい。だいいちオレさまは男だ。おとうさんってことはあっても、おかあさんってことがあるかい。いや、まてまて、おとうさんってことだってあるはずないじゃないか」
きゅうにヒヨコが生まれただけでもびっくりだったのに、そのヒヨコからおかあさんなんていわれたものですから、ニョロタはすっかりあせってしまいました。
ヒヨコをパクリとたべてもよかったのに、ニョロタはそこからあわててにげ出しました。
だからちがうんだってば(1/4)
文・山庭さくら 絵・井上真一