ねこを飼ってみたい人に

ねこいると書影ねこ いると いいなあ
さのようこ 作・絵
小峰書店

犬が飼いたいなあ。ねこが飼いたいなあ。
こどものころ、一度は思ったことがあるんじゃないでしょうか。いえいえ、大人になってからだって、思ってしまいますよね。
何をかくそう、このわたしだって、うちにはかわいい犬がいるというのに、ねこ好きなひとの話をきいていると、ねこもかってみたいなあと思ってしまいますもん。
けれども実際飼うとなると、それはそれで大変です。
本書は、そんなこどもの(おとなも)気持ちをくすぐって、ちょっとどきりとさせてくれる絵本です。
佐野洋子さんといえば『100万回生きたねこ』ですが、こちらの「ねこ」もなかなかです。

主人公のわたしは、ねこがほしいのです。でもおかあさんは、だめといいます。おかあさんが、かいものでいなくなったとき、わたしは「ねこいるといいなあ」とつぶやきます。するとどこからか「ニャー」というなき声がきこえます。1回いうと「ニャー」。2回言うと「ニャーニャー」。3回言うと「ニャーニャーニャー」。
わたしが「ねこいるといいな」というたびになき声がきこえるのです。でも、どこにも姿がみえません。そこでわたしは、真っ白い紙にねこの絵をかくことにしました。いろんなねこをかいていくうちに、わたしのまわりは、とんでもないことに・・・。

こどもの気持ち、お母さんの気持ち、そして何よりねこの気持ちに通じている佐野洋子さんならではの、ちょっとどっきり、けれどもほっとするラストがまっています。
黄色をメインにしたパステルカラーの絵、たくさん出てくるねこたちの表情も、とても魅力的です。
文も絵も、佐野洋子さんスパイスが効いていてくせになるお味です。

ねこを飼ってみたい人だけではなく、何かがほしくなった人に、手に取っていただきたい一冊です。ねこを飼ったときのこと、何かが手に入った時のことを想像してください。楽しいことばかりでなく、どきどきしてしまうようなことまで、めいっぱい。
さあ、わたしはどうしましょう・・・。
しばらくは、犬だけでいいかな。
またいつか「ねこいるといいな」の気持ちになるまでは。

◆購入サイトはこちらから →ねこ いると いいなあ

 

もり なつこ について

大阪市生まれ、鹿児島市在住。日本児童文芸家協会、日本児童文学者協会会員。「日産童話と絵本のグランプリ・優秀賞」「新美南吉童話賞・特別賞」「小川未明文学賞・優秀賞」などを受賞。2010年『『風よ! カナの島へ』 』(国土社)を出版。現在は鹿児島市内で児童クラブの支援員をしながら創作活動中。鹿児島の海と空と山と人、子どもの笑顔に癒され、ときどき桜島にびっくりさせられながら、楽しく暮らしています。