10 もういちどのタネ
黒砂糖たちは うごかなくなって
どんどん どんどん 海に とけた
コオニたちは
また モモに アイタカッタ
コオニたちは
まだ モモを オイカケタカッタ
コオニは とけていきながら
コンドハ モモヲ ノコシタロー
コンドハ モモヲ カタシタロー
マタ キテネ
マタ アラワレテネ
コンドハ タベナイ
コンドハ ナメナイ
モモヲ ノコシタロー
モモヲ カタシタロー
わすれないように
やくそくの なまえを つけておこう
モモヲ クワナイヨウニ ノコシタロー
モモヲ ナメナイヨウニ カタシタロー
ヨビニクイネ
ナガイネ
クドイネ
シツコイネ
ジャア ミジカク リャクシテ
モモ タロー
チカイ ワスレナイヨウニ
モモタロー
モモタロー
モモタロー
マタ アイタイネ
マタ オイカケタイネ
さみしい キモチを ちいさく したいかのように
コオニたちの たくさんは
だんだん だんだん
黒砂糖のように どんどん 海に とけだして ゆきました
とけた 黒い コオニたちで
海は いっとき まっ黒け
でも くじらが ひと打ち
波間を ジャンプして 海面を打つと
その くじらの あけた 波間の アナから
海は 青い色を とりもどし
もとの しずかな海へと かえっていきました
モモを 追っていた コオニたちも
黒い オニガシマも もうありません
深く しずんで いった くじらの のこした波も
ちゃぷりと なだらかな海に ちいさく とんがって
もう きえました
さわぎは もう
みんな なくなった なくなった
どんぶらこ
そんな おおきくない
とんぷかこ
もっと ちいさい
さわぎは きえて
みな なくなって
ゆらゆら ふるう 波の まに
のこっているものが
あれ? ひとつ
かもめに たべられなきゃ いいね
イルカに のみこまれなきゃ いいね
青い 波間に
ゆらゆら ぷかぷか
モモイロの タネが 浮いていた
のこっていたね
のこった
のこった
ゆらゆら ゆれる モモのタネ
いつか どこかで また 咲くのかな
おしまい