そ、そうだったのか・・・。
あっ! でも、昨日、ユーレイになったばかりということは・・・。
「あ、あの、もしかして、家に帰ったら、親戚の人とか知り合いの人とか、集まっていたりしましたか?」
なるだけやわらかく聞いてみる。
が、山野辺さんの答えはどストレートだ。
「お葬式はしていなかった。・・・母が、パピの好きな猫缶のふちをスプーンでカンカン打ち鳴らし、パピの名前を呼びながら、わたしの体に体当たりするような勢いで通り抜け、家を飛び出して行っただけだ。父は、家にいなかったから、パピ捜しは母に任せて、会社に行ったのだと思う」
「だとすると、考えられるのは・・・」
「わたしは、とっくに、」
「いいです。それ以上、言わなくて」
「ありがとう。気はつかわなくていい。わたしは大丈夫だ。昨日、自分が実体のない状態だって気づいた時は、さすがにショックだった。でも、考える時間は充分あった。わたしなりに導いた結論は、」
「はい・・・」
「わたしは、とっくにあの世に行っていて、パピを迎えにきたというのが、妥当な線だと思う。迎えに来たのに、おいてけぼりをくってしまったけど・・・」
「・・・はい」
「だから、いや、だからと言うのはおかしいか・・・。まずは、あやまらせて。後出しの情報ばかりで、ごめんなさい」
「そんな・・・、あやまらないでください」
「鎮守の森のことだって、最初に理由を話したら、ついて来てもらえないだろうと・・・。わたしはユーレイだから実体には触れられない。パピのナキガラを運べない。如月くんを利用するようなことをして、ほんとうに、ごめん」
それに、と山野辺さんは、チャッピーにやさしい視線を向ける。
そして、
「わたしやパピと、如月くんをつないでくれて、ありがとう! もうしばらく、つきあってください」
丁寧に頭を下げた。
「もちろんです!」
チャッピーの代わりに応え、
「ぼくも、山野辺さんが成仏するまで、おつきあいしますから!」
心の中でつけ足した。