「そこで、さっそくなんだけど、家に着いたら、母にパピのこと、伝えてほしい。もう、旅立ったって」
「・・・はい」
「そして、眠りについたパピの居場所も、わたしが必ず見つけるって」
「はい、でも・・・。どうやって?」
「わたしは、実体がない。魂だけの存在。そう居直ったら、捜す方法も範囲も広がるんじゃないだろうか? ほら、こうして、ピュン! と飛んだり、あれ? 飛べないのか? わたし・・・」
山野辺さんは、両腕を空に向かって突き出して、ピュンピュンとつま先で地面を蹴るようにした。
「まだ慣れてないからか・・・。特訓が必要なのかな・・・。まっ、飛べなかったとしても、歩けるし走れるし。昨日だって、如月くんと会った後、山を捜しまわったけど、全く疲れない。・・・でも、やはり、飛んでみたい・・・、ピュン!」
「そうですね。がんばってください」
「うん! いろいろがんばって、わたしもちゃんと成仏する。そして、向こうの世界で、またパピと会う。パピが消えた時は自分がユーレイだって一瞬わすれた。パピとは永遠に会えないような気がしてしまった。もの凄くさみしくなった。バカだな、わたしは。すぐ会えるのに」
山野辺さんはそう言って、小さく笑った。
山野辺さん、ぼくが、もし、同じ立場だったら。
ぼくだって、さみしくなると、思う。
ユーレイだって、一瞬わすれて、さみしくなると思う。
だから、ぜんっぜんバカじゃないから、元気出して!
「ありがとう! 如月くんが一緒だと、ほんとうに心強い。わたしが成仏するまでつきあってくれると言うし」
「わっ、ぼく、また・・・」
「さあ、帰ろう!」
ぼくは、ピュンピュンしながら歩き始めた山野辺さんを、応援しようと心に誓った。