「おえかき、したい!」
一ぴきの子ヤギがそういうと、みんなも「やるやる!」とクレヨンとおえかきちょうをもってきました。
「オオカミさんがかきたい!」
男の子のヤギも女の子のヤギも、ガブリといっしょにあそんでいるえをかきました。どのえも、ガブリがえがおで子どもたちとあそんでいるえです。
「オオカミさんにプレゼント!」
そういうと子ヤギたちは、つぎつぎとガブリにえをさし出しました。
《なんておいらはしあわせそうなかおをしているんだろう》
子ヤギたちのえを見ているうちに、ガブリはポロリとうれしなみだをこぼしました。
「ねえねえ、こんどは、わるものごっこしようよ。オオカミさんがガオーってぼくたちにいって、ぼくたちが、おもちゃのピストルでうつマネをするから、オオカミさんはたおれてね」
「ガオーっ」と、ガブリが大きなこえでおそいかかるふりをすると、子ヤギたちが
「バキューン。バキューン」といいながらピストルでうつマネをします。
するとガブリは
「や、やられたあ」と、バタリとたおれます。
子どもたちは大よろこび! おなかをかかえてゲラゲラわらっては、なんどもなんどもせがみます。
そうしてガブリが子どもたちとたのしくあそんでいたときに、子ヤギたちのおかあさんがかえってきました。
「ガオーっ」
オオカミが、子どもたちをおそおうとしているではありませんか!
びっくりしたおかあさんヤギは、だいどころから大いそぎでフライパンをもってくると、オオカミをやっつけようと、ふりあげました。
それを見たガブリは、びっくりして、おもわずしゃがみこみました。
「あっ、おかあさんなにするの! ぼくたち、オオカミさんとあそんでるんだよ」
「なにいってるの! オオカミはおまえたちをたべてしまうのよ。いつもえほんをよんであげていたでしょう」
そういいながら、おかあさんヤギがふとテーブルの上を見ると、たくさんの子どもたちのえが目に入りました。
どれも、やさしそうなオオカミが、たのしそうに子ヤギたちとあそんでいるえです。
「まあ、オオカミさん。ごめんなさい。子どもたちとあそんでくださっていたんですね。わたしとしたことがどうしましょう」
おかあさんヤギは、あやまりながら、ガブリをたすけおこしました。
ガブリはおかあさんヤギのことばに、子ヤギをたべに来たことをおもい出しましたが、
さっき、フライパンをふりあげられたことをおもいだして、やさしいことばは、ワナかもしれないと、ドキドキしました。
「これからおやつのじかんですから、オオカミさんもごいっしょにどうぞ」
おかあさんヤギのことばにほっとしたガブリは、子ヤギたちと一しょに、ドーナツをたべました。《ワイワイガヤガヤ、にぎやかにみんなでたべるのって、こんなにおいしいんだな》と思いながら。
「そろそろかえらなきゃな」
ドーナツをたべおえたガブリがいうと
「いやだ。まだかえらないで!」
子ヤギたちは、みんなで足にまとわりついて、はなしません。
「オオカミさん・・・。あら、まだお名まえをおききしてなかったわ。わたしはメイヤっていいます」
「おれさまはガブリ」
「ガブリさん、ぜひまた子どもたちとあそんでやってくださいね」
森をあるきながら、ガブリは子ヤギたちをたべるのをわすれたことをおもい出しました。
《こんどこそ、あのやわらかそうな子ヤギたちをたべてやるぞ》とおもったガブリは、子ヤギたちのいえから、そうとおくないところにいえをつくりました。