◆少し面喰うことも
20代からアメリカと仕事をする機会を得ていた私は、2010年に移住する時にはすでに50回以上の渡米経験がありました。当然50回以上もアメリカに来ていれば、相当アメリカを知った気になってもいたのですが、実際にここで暮らすようになって初めて知ったことは、アメリカでは日曜日に教会に通うという人が、非常に多いということでした。
特に南部にいた頃は周囲がほぼ保守層で熱心なキリスト教徒という人ばかりだったので、教会にいかない人のほうが珍しく、引っ越した途端にさまざまな教会から勧誘がきて、少し面喰ったことを覚えています。
仕事で見るアメリカと、実際にアメリカに住み、家族をもって、コミュニティーの中に根を下ろした所で初めて見えるアメリカとは、随分違っていました。当然と言えば当然でしょうが、引っ越して1、2年は日米の差異に驚いて、ショックを受けるようなこと結構ありました(さすがに今は慣れてしまい、何があっても驚かなくなりましたが:笑)
日本は仏教の行事でもキリスト教の行事でも「良い所は全部楽しむ」的な国ですし、私自身も無宗教的に生きてきたので、アメリカに来るまでアメリカ人の約80%がキリスト教徒ということに対し、あまりにも無知だったということです。絵本についてもしかりで、一見そうは見えないような本でも、読んでいくうちに「とてもキリスト教的だ」と思えるような絵本作品は、かなりあることが、この国のキリスト教信仰の広さを物語っています。
このようにキリスト教徒大半を占めるアメリカですが、今は多様な文化、宗教背景、民族への敬意という点から、教会の仲間など、明らかに相手もキリスト教と分かっている場合以外は、表立って「メリー・クリスマス」とあいさつをする人は少なくなりました。街はツリーで一色ですが、アメリカのこの季節の合言葉は「ハッピー・ホリデーズ」です。
こうした他の信仰への敬意が積み重なっていくと、数年後にはひょっとすると、絵本の中身にも影響が出てくるのかもしれません。あと10年、20年、孫が誕生するくらいになった時、どんな絵本がこの国に誕生しているのか――「絵本の物語の変遷もまた、歴史の変化の一部」なのだろうと、感じる年の瀬です。