エルとくるみとソラ(7/7)

文・七ツ樹七香  

「あっ、あー! それ! ソラにそっくり!」
孝太は絵を指差して大きな声で言った。
くるみ、ゆい、孝太の三人は学校で「芸術の秋」という宿題を見せ合っていた。みんな好きに絵をかいて持ってきなさいという宿題だ。
ゆいはクリとぶどうの写生、孝太は真っ赤なもみじをダイナミックにえがいたものを持ってきていた。

くるみの絵が上手いことはみんな知っているので、最後に見せることになっていたのだ。
「え、孝太はソラを知ってるの? この子、本当にソラっていうの。うちの新しい家族」

花開いたキンモクセイとローズマリーのある庭の風景。そして秋らしい真っ青な空のえがかれたくるみの絵はやはりだれよりも上手だった。そして、その絵には大きな犬が一頭かかれていた。そばには水色のゴムボールもある。

「あ! やっぱり。里親をぼしゅうしてたときに、うちも希望してたんだよ。その時は元の飼い主さんの知り合いのところに、トライアルに行ってるって聞いてた。そこでダメだったらうちにも来る予定でさ。あれ、くるみの家だったのか。くっそー! いいなぁ」
「うん、ごめんね。ソラは、うちの子になったから」

七ツ樹七香 について

(ななつきななか)熊本県出身。「ピイのとんだ空」で第30回日本動物児童文学賞優秀賞。 「ラスト・オテモヤン」で第41回熊本県民文芸賞小説部門一席を受賞。熊本日日新聞に全10回連載され好評を博す。本作は朗読CD化、熊本県内数カ所の図書館で視聴可能。 ほか、第1回西の正倉院みさと文学賞 佳作、集英社WEBマガジンコバルト がんばるorがんばらない女性小説賞大賞、第16回深大寺恋物語 調布市長賞など。 共著に『謎解きホームルーム2』『恐怖文庫』『感動文庫』(いずれも新星出版社)動物が好き。犬と小鳥と暮らしている。