エルとくるみとソラ(7/7)

文・七ツ樹七香  

はっきりと「犬はキライ」と伝えていた気はずかしさもあって、くるみがちいさな声で話すと、孝太は気にしていないような顔で胸をはった。
「いいよ。今、うちブリーダーさんとも話をしてて、ミニチュア・シュナウザーゆずってもらう予定なんだ」
それを聞くと、ゆいもはしゃいでこう続けた。

「えー! じゃあ、三人とも犬飼うことになるね。みんなで集まってみたい! でもさあ、くるみちゃんは犬のことキライじゃなかったの?」
「・・・キライ、やめたの。ウソついてごめんね」
くるみはすなおにあやまった。

「やっぱり、好きだったから。エルはもういないけど、やっぱり大好きだし、ソラもぜったいうちで幸せにするんだっ!」
くるみは決意をかかげるように、絵の具で色をつけた絵を両手で上に持ち上げた。

そこには立ち耳であいきょうのある顔立ちの、毛の長い犬が楽しそうに笑っていた。
「ソラを、いっぱいかわいがるよ。ずっと大好きって、たくさん言うんだ、わたし!」
くるみが力いっぱい笑う。
くるみには、エルとソラが「ワン!」とうれしそうに返事をするのが、聞こえたような気がした。
(おわり)

七ツ樹七香 について

(ななつきななか)熊本県出身。「ピイのとんだ空」で第30回日本動物児童文学賞優秀賞。 「ラスト・オテモヤン」で第41回熊本県民文芸賞小説部門一席を受賞。熊本日日新聞に全10回連載され好評を博す。本作は朗読CD化、熊本県内数カ所の図書館で視聴可能。 ほか、第1回西の正倉院みさと文学賞 佳作、集英社WEBマガジンコバルト がんばるorがんばらない女性小説賞大賞、第16回深大寺恋物語 調布市長賞など。 共著に『謎解きホームルーム2』『恐怖文庫』『感動文庫』(いずれも新星出版社)動物が好き。犬と小鳥と暮らしている。