はっきりと「犬はキライ」と伝えていた気はずかしさもあって、くるみがちいさな声で話すと、孝太は気にしていないような顔で胸をはった。
「いいよ。今、うちブリーダーさんとも話をしてて、ミニチュア・シュナウザーゆずってもらう予定なんだ」
それを聞くと、ゆいもはしゃいでこう続けた。
「えー! じゃあ、三人とも犬飼うことになるね。みんなで集まってみたい! でもさあ、くるみちゃんは犬のことキライじゃなかったの?」
「・・・キライ、やめたの。ウソついてごめんね」
くるみはすなおにあやまった。
「やっぱり、好きだったから。エルはもういないけど、やっぱり大好きだし、ソラもぜったいうちで幸せにするんだっ!」
くるみは決意をかかげるように、絵の具で色をつけた絵を両手で上に持ち上げた。
そこには立ち耳であいきょうのある顔立ちの、毛の長い犬が楽しそうに笑っていた。
「ソラを、いっぱいかわいがるよ。ずっと大好きって、たくさん言うんだ、わたし!」
くるみが力いっぱい笑う。
くるみには、エルとソラが「ワン!」とうれしそうに返事をするのが、聞こえたような気がした。
(おわり)