ジロとドロとヴァイオリン(6/7)

文と絵・すむらけんじ

でも・・・3日後にまた、ドロがやってきたのだ。夜の1時もとっくにすぎたころに。
ボクは、サロンのソファーの上でねむっていた。気配を感じて目をあけると、ろうかにともされた小さなでんとうの下を黒いかげがとおりすぎた。やがてボクの食べのこしをガツガツと食べている音がかすかにきこえてきたのだ。
そのとき・・・おや?
あのきらきら星のヴァイオリンが、しずまりかえった深夜にひびいてきたのだ。
ガツガツはぴたりととまった。ドロのうなり声をきいたような気がした。そして、ゲーゲーはきちらす音までが。
やれやれ、また、りつ子さんにしかられるのはボクなんだ。そして「ジロをじゅういさんに一度みせたほうがいかしら」って思うかもしれない。
ヴァイオリンはまだなっている。夫婦のしんしつは2かいにある。ステファノがねている小さな部屋のとなりなのにきこえないのかな。
ジロとドロ6なんと、おとなりのおじいちゃんの方が先に目をさましてしまったのだ。
「うるさい! こぞう、ポリスを呼ぶぞ!」
おじいちゃんがどなっている。やっとりつ子さんが目をさましたようだ。けたたましい足音。
「ステファノ、どうしたのよっ!  真夜中の2時っていうのに!」
「ごめんね、りつ子おばちゃん。自分でもさっぱりわからないの」
「アーティストには時間の観念がないのだ。ステファノは世界的なヴァイオリニストになるぞ!」
チェーザレ氏が大あくびをしながらさけんでいる。

すむらけんじ について

山口県出身。東京芸大工芸科卒業後、富士フイルム宣伝部に勤務。その後イタリアへ。ミラノで広告、パッケージののためのイラストレイター(フリー)として現在にいたる。 趣味は旅行、クラシック音楽、とくにオペラ。ミラノで4匹目の猫を飼っている。自分の描いたイラストを入れて、猫をテーマに短い物語や生活のことを書きたい。