ハトは夢中でつつきました。
その間、チェシャは、その場に、どっかり、こしをおろして、デッキに並んでいる仲間のハトたちに、にらみをきかせていました。
おまえたちにはひとかけらだって食べさせないぞ、と言わんばかりに。
手すりのハトたちは首を縮め、
「いったい、どうやって、オイボレはネコを味方につけたのかなあ?」
「やっぱり、偉大(いだい)な知恵者だったのかなあ?」
などと、小声でささやき合っています。
ハトの食欲が、一息、ついたところで、チェシャは言いました。
「待たせて、ほんとに、ごめん。何しろ、ご主人の目をぬすんでパソコンを開くの、大変だったんだよ。ご主人、ここ何日も、てつ夜続きで、ちっとも、机の前をはなれなかったから。やっと、ゆうべ、ヨハンソンさんがね入ってから開いたんだ。それで、町周辺の地図を見て、太陽王が出そうな森を探したんだよ」
「あんたは、どうして、そんなにすごいんだね。人間の道具を使いこなせるなんて!?」
ハトは、ほとほと、感心しましたが、
「どうってことないよ。とても簡単な道具だからね。キーボードをおすだけなの。ネコの手でもお茶の子」
チェシャは前足を上げて、ピンク色の手のひらを、パラパラっと、動かして見せました。
「それに、ほら、ぼく、何回か、生まれ変わっただろう。どうしてか分からないけど、生まれ変わるたびに、人間のことが、いろいろ、分かるようになってきたんだ。言葉や、文字や、考え方なんかもね」
『ああ、やっぱり』
と、ハトは思いました。
そして、
『ひょっとしたら、9回目に生まれ変わった時には、チェシャは人間になっているのかもしれないぞ』
などと、変な考えが思い浮かびました。