チェシャは、ハトがそんな想像をしていることなど、てんで、気づかずに、ご主人のコンピュータで調べてきたことを話し始めました。
「この町が東を海に面していることは知っている? あとの三方は山で囲まれているんだ。『森の都』とはよく言ったものだね。だけど、近くの山々は、『太陽王』が住むには低過ぎて、人も多過ぎるようだよ。
地図を見ると、その低い山々の向こうに、ずっと高い山並みが連なっているんだ。そういう山々は、今ごろからでも、てっぺんが雪で白くなっていたりして、高いビルからなら見えるらしいよ。ぼくは見たことないけどね。
もっともっと南に行けば、富士山という、この島で一番高い山があるんだけど、君のそのつばさでは、たどり着くのはとても無理だと思うな。
ここから一番近くて、君でも飛んでいけそうな高い山といったら、蔵王(ざおう)という山だよ」
「どこにあるんだい、その山は!?」
ハトは、プーッと、胸をふくらませました。
「ここから南西の方角だよ。ふつうのハトだったら、2時間かそこらで、飛んで行くことができるきょりなんだ」
「ナンセイ・・・? ニジカン?・・・」
ハトは、プポッと、首をかしげました。そんな人間語、チンプンカンプンです。
「ああ、ごめん、ごめん」
チェシャは、ハトにも分かるように、説明しました。