「おまえさんの糸で、すを作ってくんないかな。おれのは、ほぼ使いきっちゃったんだ」
ぼくはうれしくなってさけんだ。
「いいよ! じゃあ、いっぱいねばらなきゃ。なにか入れものがほしいな。・・・あ、いいの見つけた」
かれ葉の間に、ぼうしをかぶった丸いどんぐりがおちていた。ぼうしの先を両手でひっぱった。うまいぐあいにすぽんとぬけた。ぼうしをもって木の上にあがると、ぼくはその中に入った。
「かきまぜてみて」
「こうかい?」
クモは前足をおそるおそる入れた。
「やあ、おもしろい。糸が出てきた。どうせなら・・・」
クモは8本の足ぜんぶをぼうしの中に入れて、かき回し始めた。
しばらくすると、ぼくのからだはたくさんの糸でくるまれた。
「このねばりぐあいなら完ぺきなすができるぞ」
クモが目をかがやかした。
「まず、たて糸はおれがはるからな。家の中を歩くにはつるつるの糸じゃなきゃいけない」
「きみ、ねばらない糸も出せるの」
ぼくが感心している間に、数本の糸が木と木の間にかけられた。
「次はおまえさんの番だ。今日は風があるから、楽しいぞ」
ぼくはクモのいうとおりに糸の間をとんだ。
「えいや!」
風にのってとぶと、うまく次の糸にうつれた。ぼくのからだの後について、糸がふんわりと空をまう。何回もぴょんぴょんとんでいるうちに、たくさんの円があるりっぱなすができた。
ぼくはそのまん中にすわり、ねばり気たっぷりのぴかぴか光るすをながめた。
なによりうれしかったのは、クモが大よろこびしてくれたことだ。