ビバ・ネバル!(5/6)

文と絵・高橋貴子

(むりかもしれない)
ぼくが弱気になりかけた時、チョウの足が葉からはなれかけた。少しずつからだがながされはじめる。

おもわずぼくはチョウにむかってさけんだ。
「がんばれ! あきらめるな」
その言葉が自分自身にひびいた。
(そうさ、ビバ・ネバル。さいごの一しゅんまでねばりきるんだよ)

ぼくはいそいでチョウに聞いた。
「きみの羽に糸をかけてもいいかい?」
かのじょはびくっとからだをふるわせてから、力なくこたえた。
「ええ・・・いいわ」
ぼくはふたたびとんだ。

風にあおられそうになったけれど、ぜったいにかのじょのところに着くという一心だった。
糸もしっかりついてきてぼくのからだをささえる。
羽に糸をくるりとまくと、また風にのって木の上にもどった。
それをくりかえす。
何本もの糸がチョウとぼくたちをつないだ。

高橋貴子 について

(たかはし たかこ)米国・オレゴン大学国際関係学部卒業。外資系企業に勤めながら、子どもの本について考えています。子どもが作りたての小説を真剣な目で読んでいたのが最近の一番嬉しい出来事です。第3回講談社フェーマススクールズ絵本コンテスト講談社児童局賞受賞。