そんなにぎやかな南極の夏も、少しずつ、様子が変わって行きました。
太陽は、地平を一回りするごとに、だんだん、低くなって行きます。
それにつれて、風は冷たさをまし、時には、痛いほど、強くふきました。
雪あらしになれば、ペンギンたちは、地面に、ぺったりはらばいになって、じっとおさまるのを待つしかありません。
でも、うれしいこともありました。
そんな時分には、アディたちの羽毛も、あちこち、ぬけて、まだらになり、その下から、つやつやのえんび服が現れたのです。
もう、子供ではありません。ついに、親たちが、若いペンギンたちに向かって、言う日がきました。
「さあ、おまえたち、いっしょにおいで!」
若いペンギンたちは、親たちにくっついて、ペンギン村を後にしました。
氷の上を、パタパタ、歩いたり、お腹で、スイーっと、すべったり。
ぎょうぎよく、一列に並んで、進んでいきます。
そして、ようやく、目にしたのです! 広く、まぶしい初めての海! 太陽にきらめきながら、どっしり、うかぶ氷の島々!
ペンギンたちは、先をあらそって、走り出しました。そして、氷の岸辺から海へと、ボチャボチャ、なだれて行きました。
若いペンギンたちだって、ちっとも、こわがらず、次々、飛びこみます。
「うわあ、いい気持ち!」
アディはうれしくてたまりません。何しろ、水中では、自分でも、びっくりするほど、自由だったのです。
「あたしの小さなつばさ! あたしの、ぴったりのえんび服!」
それらは、神様が、ペンギンたちにくれたすばらしいパドル、すぐれたウェットスーツだったのです!
地上では、ヨチヨチ歩きしかできなかった足だって、力強いフィンに早変わり!
大人にならって、アディたちは、ぐんぐん、もぐり、それから、息をするために、そろって、水面に顔を出します。
その間、自分たちの力で、オキアミや小魚をつかまえ、たらふく食べたのです。
「ああ、おいしい!」
おなかがいっぱいになると、美しい氷の島に、ぴょんと、はね上がり、あたたかな日差しの下で、ブルブルっと、体をかわかします。
そばでは、アザラシの親子も、のんきに、ねています。