「今だわ」
アディは、けんめいに宝石から手をはなそうとしている姫にむかって言いました。
「助けてあげるわ。あたしの願いを聞いてくれたらね」
姫は、すっかり、おどろいてしまいました。何しろ、死んでいるとばかり思っていたペンギンが、むくむくと動いて、しゃべりだしたのです。
「これはおまえのしわざね!?」
「そうよ。あたしがやったの。あたしがじゅ文を解かないかぎり、あんたはにげられないのよ」
「ふん、こんなもの!」
姫は、あらんかぎりの力で、手をぬこうと、もがきました。
ところが、そのせいで、前より、もっと、体が石にくっついてしまいました。
それどころか、緑色だった体は石にすいとられて、赤くそまりながら、どんどん、縮んで行きます。
「ああ、助けて! 何でもするから!」
とうとう、姫は泣き出しました。
「しめた!」
アディはにっこりしました。
「何でもするのね。約束する?」
「ええ、約束するわ」
「じゃあ、神様の庭に行って、弟を連れてきてちょうだい。弟はトトって言うのよ」
「いいわ。さあ、じゅ文をといて」
ずいぶん、あっさり、引き受けたものです。
でも、アディは、喜んで、2つ目のじゅ文をとなえ始めました。