公園には、ぼくのほかには、だれもいない。
風が強くて、砂ぼこりもすごい。
「今日は、春一番が吹くでしょう」
って、朝のニュースで言ってたっけ。
今日は、パパもママも、仕事でおそい日。
家に帰っても、どうせ、ひとり。
公園のかべ相手にボールをけっていると、くーっと、おなかが空いてきた。
ポケットには、大好物のラムネが1こ入ってる。
10円玉くらいある、特大のラムネ。
けんかする前に、ようちゃんがくれたんだ。
取り出してセロハンを開いたら、ビューッ。
風が吹きつけてきて、砂が目に入った。
目をこすったはずみに、コロリ。
ラムネは、地面に落ちてしまった。
「もう。なんだよ」
ラムネにも、ラムネをくれたようちゃんにも、ずんずん腹が立ってくる。
落ちたラムネを、ボールみたいに、けっ飛ばしてやろうとしたときだ。
ラムネスイッチ(1/5)
文・円山なのめ