ラムネスイッチ(2/5)

文・円山なのめ  

「スイッチじゃないよ。これは、ラムネ」
おそるおそる、言ってみる。
「スウィッチ。プッシュ。プッシュ」
どうも、こいつは、
「このラムネはスイッチだから、押せ」
って、ぼくにすすめているらしい。
ばかみたい。
でも、言うことをきかないと、何をされるかわからないし。
しゃがみこんで、指でラムネを押した。

ピッ。
「あれっ」
本物のスイッチみたいな手ごたえがあって、ラムネが地面に引っこんだ。
その、とたん。

円山 なのめ について

東京都出身。早稲田大学教育学部卒。一児の母。子育てしながら文筆活動、里山保全活動をしています。 旧姓:西沢での著書に『イボ記』(小学館)。表題作は女子大生の足指のイボをめぐる異色青春小説。併録の『おしえない』は黄面と呼ばれる異形たちの国に迷い込んだ人間が出会う不条理奇譚。現在は電子書籍ストアにて発売中(イボ記』)。 HP:なのめのめ